事業承継の税制優遇・遺留分特例|相続税の納税猶予と民法特例をわかりやすく解説 | 相続の窓口
- 公開日:2017/12/06
- 最終更新日:2026/06/24
平成20年10月1日に「中小企業における経営の円滑化に関する法律(経営承継円滑化法)」が施行されました(遺留分に関する民法の特例は平成21年3月1日施行)。これを受け、後継者への自社株式の集中と経営権の安定的な承継を支援する税制・民事上の特例制度が整備されています。
本ページでは、①相続税の納税猶予制度と②遺留分に関する民法の特例の2つを中心に、制度の内容・要件・手続きの流れを解説します。
相続税の納税猶予制度(事業承継税制)とは
平成21年度税制改正により、「取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予制度」を中核とする事業承継税制が創設されました。後継者が非上場株式を相続した場合、一定の要件を満たすことで相続税の納税が猶予され、要件を継続して満たせば最終的に免除されます。
📌 制度の根拠
租税特別措置法第70条の7の2(非上場株式等に係る相続税の納税猶予及び免除)
参考:国税庁|非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例
制度の主なメリットと注意点
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 非上場会社の後継者(平成27年1月より親族外後継者も対象) |
| 猶予割合 | 自社株式に係る相続税額の一定割合(特例措置では100%猶予) |
| 株価下落時のメリット | 後継者死亡時の次の相続では相続時点の時価で評価されるため、株価下落局面では大幅な税負担軽減が可能 |
| 雇用維持要件 | 申請後5年間の平均で従業員数を8割以上維持(平成27年1月より平均値に緩和) |
⚠️ 注意:猶予取り消しリスク
- 後継者が代表者を退任・株式を譲渡した場合、猶予は打ち切られ、猶予税額+利子税が一括で課されます。
- 雇用維持要件(5年間平均8割)を下回った場合も同様です。
- 猶予ではなく最終免除となるのは、後継者自身が亡くなった時点など、長期要件の充足後です。
制度の適用を受けるかどうかは、後継者になる方が顧問税理士・司法書士等の専門家と十分に検討した上で申請することが不可欠です。
遺留分に関する民法の特例(経営承継円滑化法)
後継者への自社株式の集中にあたって障害となりやすいのが、他の相続人からの遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)です。経営承継円滑化法では、一定の要件を満たす中小企業の後継者について、推定相続人全員の合意を前提に、以下の民法の特例を受けることができます。
📌 制度の根拠
中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律 第3条〜第9条
参考:中小企業庁|経営承継円滑化法(民法特例)の概要
3種類の合意とその効果
合意の種類は下記の3つです。①除外合意・②固定合意のどちらか一方または両方を必ず行い、必要に応じて③付随合意を追加することができます。
先代経営者から後継者への贈与株式を、遺留分算定の基礎財産から除外する合意
この合意により、後継者に自社株式を集中させても遺留分侵害額請求を受けるリスクがなくなり、株式の分散を防いで安定した経営権を確保できます。
贈与株式の評価額を合意時点の価額に固定する合意
通常、生前贈与株式の遺留分計算は相続発生時の時価で行われます。後継者が経営努力で業績を向上させた分だけ評価額が上がり、遺留分・相続税がともに増加するという不合理を解消できます。
⚠️ 株価が合意後に下落した場合は後継者に不利な合意となるため、株価算定書の取得など慎重な検討が必要です。
後継者以外への生前贈与財産を遺留分算定の基礎財産から除外する合意(任意)
後継者以外の相続人への生前贈与についても遺留分算定の対象から外すことで、推定相続人間の贈与バランスを整え、円満な合意形成を促進します。
民法特例の手続きの流れ
合意成立後は、以下の手順で経済産業大臣の確認・家庭裁判所の許可を経て、合意が正式に効力を生じます。
| ステップ | 手続き | 期限・備考 |
|---|---|---|
| ① | 推定相続人全員による合意(除外合意・固定合意等) | 公証人の関与が必要(書面作成) |
| ② | 経済産業大臣への確認申請 | 合意から1ヶ月以内に申請書を提出 |
| ③ | 家庭裁判所への許可申立て | 確認を受けた日から1ヶ月以内に申立て |
| ④ | 家庭裁判所の許可確定 | 許可により合意が正式に効力を生じる |
⚠️ 期限の厳守が必要です
合意から経産大臣確認申請まで1ヶ月以内、確認取得から裁判所申立てまでさらに1ヶ月以内と、二段階の短い期限が定められています。専門家への早期相談をお勧めします。
まとめ:事業承継を円滑に進めるために
- 相続税の納税猶予制度を活用すれば、後継者の相続税負担を大幅に軽減できる
- ただし雇用維持・代表継続など継続要件の不履行は猶予取り消しにつながるため、長期的な計画が必要
- 遺留分の民法特例(除外合意・固定合意)により、株式分散リスクと後継者の経営権を同時に保全できる
- 合意後の手続き期限は合計2ヶ月以内と非常に短く、早期に専門家(司法書士・弁護士・税理士)と連携することが重要
また、まとめサイト等への無断引用を厳禁いたします。
この記事を担当した司法書士

司法書士法人クオーレ
代表
鈴田 祐三
- 保有資格
司法書士・行政書士・宅地建物取引士
- 専門分野
-
相続・遺言・生前対策・不動産売買
- 経歴
-
立命館大卒。平成13年司法書士試験合格。平成19年に鈴田司法書 士事務所を開設。平成27年に司法書士法人クオーレを立ち上げ、 代表を務める。事務所開設以来、多数の相続の相談を受けており累 計相談件数1,400件以上の実績から相談者からの信頼も厚い。






















































