障がいのある子どもの「親亡き後」を守る民事信託の活用方法 | 相続の窓口|【公式】司法書士法人クオーレ
- 公開日:2017/12/06
- 最終更新日:2026/06/24
相談事例:障がいのある息子の「親亡き後」が心配
【相談内容】
Aさんには妻Bさんと、知的障がいのある一人息子Cさんがいます。Aさんは自分たちが亡くなった後、Cさんに財産を残したいと考えていますが、Cさんは財産を自分で管理する判断能力がありません。
遺産を相続しても適切に活用できるか心配で、「自分たちがいなくなった後も、Cさんの生活を安定させたい」というのがAさんご夫婦の切実な悩みです。
このようなご状況は、障がいのあるお子さんをお持ちの親御さんにとって共通の不安です。遺言書だけでは「財産を誰に渡すか」は決められても、「その後、誰がどう管理するか」までは指定できません。こうした課題を解決する有力な手段が、民事信託(家族信託)です。
民事信託(家族信託)とは
民事信託とは、信頼できる家族や親戚に財産の管理・運用・処分を託す仕組みです。法律上の根拠は信託法(平成18年法律第108号)にあり、当事者間の契約によって柔軟な設計が可能です。
民事信託の3つの登場人物
| 役割 | 説明 |
|---|---|
| 委託者 | 財産を預ける人(本事例ではAさん) |
| 受託者 | 財産の管理・運用を担う人(本事例では親戚Dさん) |
| 受益者 | 財産から生じる利益を受け取る人(本事例ではAさん→Bさん→Cさんへ順次移行) |
「受益者連続型信託」を使った解決策
Aさんのケースで特に有効なのが、受益者連続型信託(信託法第91条)です。受益者を段階的に変更できる設計で、「Aさん→Bさん→Cさん」という順序で財産を管理・給付していくことができます。
STEP 1信託契約の締結
AさんとDさんが信託契約を公正証書で締結。財産(不動産・預貯金など)を受託者Dさんへ移転します。不動産は法務局で信託登記を行います。
STEP 2Aさん存命中:Aさんが受益者
DさんはAさんの指図に従い財産を管理。Aさんは必要に応じて信託財産から給付を受けます。
STEP 3Aさん死亡後:Bさんが受益者に移行
Bさんは信託財産からの給付を受けながら生活。遺産分割手続きは不要で、スムーズに移行できます。
STEP 4AさんBさん双方の死亡後:Cさんが受益者に
Cさんは判断能力がなくても、DさんがCさんの生活費・医療費・施設入所費などを信託財産から支出。Cさんの生活を継続的に支えることができます。
信託終了後:Cさんの死亡などをもって信託は終了。残余財産の帰属先もあらかじめ契約で指定できます。
信託報酬の設定について
受託者であるDさんには、財産管理の対価として信託報酬を支払うことが可能です(信託法第54条)。報酬額は信託契約で自由に定めることができ、月額固定や年額一括など、実態に合わせた設計が可能です。
報酬を信託財産から支出することができるため、家族への過度な金銭的負担を避けることができます。
「使い込み」リスクへの対策:信託監督人の活用
⚠ 注意:受託者への監督は必須です
民事信託では受託者(Dさん)が財産を管理しますが、受託者が信託財産を私的に流用するリスクがゼロではありません。信頼関係が前提とはいえ、第三者による監督の仕組みを組み込むことが重要です。
そこで有効なのが、信託監督人の設置です(信託法第131条)。司法書士・弁護士などの法律専門家を信託監督人に選任することで、受託者の業務執行を継続的にチェックする体制を整えることができます。
| 比較項目 | 信託監督人なし | 信託監督人あり |
|---|---|---|
| 受託者の行動チェック | なし | あり(定期報告義務) |
| 不正発見時の対応 | 発見が遅れるリスク大 | 早期発見・是正が可能 |
| 障がいのある受益者の保護 | 受益者自身での監督は困難 | 専門家が代わりに監督 |
なお、受益者が判断能力を欠く場合(Cさんのようなケース)、受益者自身が受託者を監督することは実質的に不可能です。信託監督人の設置は、障がいのあるお子さんを守るために特に重要な設計といえます。
民事信託と成年後見制度の違い
「成年後見制度ではダメなのか」というご質問をよくいただきます。両制度には以下の違いがあります。
| 比較項目 | 民事信託 | 成年後見制度 |
|---|---|---|
| 開始のタイミング | 元気なうちに設計・開始可能 | 判断能力低下後に申立て |
| 設計の柔軟性 | 高い(オーダーメイド) | 低い(家庭裁判所の監督下) |
| 不動産売却の自由度 | 信託契約の範囲内で自由 | 家庭裁判所の許可が必要 |
| 費用 | 初期設計費用が中心 | 後見人報酬が毎月継続的に発生 |
ただし、民事信託は財産管理に特化した制度であり、身上監護(医療・介護に関する意思決定)は対象外です。Cさんの生活全体を守るには、民事信託と成年後見制度を組み合わせることも選択肢の一つです。
まとめ:民事信託で「親亡き後」に備える
民事信託(受益者連続型)を活用するメリット
- 親が元気なうちに「財産の行き先」と「管理方法」を決められる
- Aさん→Bさん→Cさんと、段階的に受益者を移行できる
- 判断能力がないCさんの生活費を、継続的・安定的に支出できる
- 信託監督人を置くことで受託者の不正リスクを抑制できる
- 遺産分割協議が不要なため、相続発生時の手続きがスムーズ
民事信託の設計は、お客様ごとの家族構成・財産状況・障がいの種類・将来の生活費見通しによって大きく異なります。「我が家の場合はどうすればいいか」という具体的なご相談は、専門家への早めの相談が重要です。
参考:法務省「信託法の概要」
また、まとめサイト等への無断引用を厳禁いたします。
この記事を担当した司法書士

司法書士法人クオーレ
代表
鈴田 祐三
- 保有資格
司法書士・行政書士・宅地建物取引士
- 専門分野
-
相続・遺言・生前対策・不動産売買
- 経歴
-
立命館大卒。平成13年司法書士試験合格。平成19年に鈴田司法書 士事務所を開設。平成27年に司法書士法人クオーレを立ち上げ、 代表を務める。事務所開設以来、多数の相続の相談を受けており累 計相談件数1,400件以上の実績から相談者からの信頼も厚い。






















































