自社株を後継者へ贈与したいが、議決権は引き続き保有したい | 相続の窓口|【公式】司法書士法人クオーレ
- 公開日:2017/12/06
- 最終更新日:2026/06/24
事例:株式は贈与したいが、議決権は手放したくない
事業を営むAさんは、業績好調により自身が保有する自社株の評価額が年々上昇しています。相続税対策として、評価額が上がりきる前に後継者である息子のBさんへ株式を贈与することを検討していますが、一つ悩みがあります。
- 息子Bさんはまだ経営者として修行中であり、すぐに経営の実権を渡すのは不安
- 当面は自分自身が議決権を持ち、会社経営の舵取りをしたい
- 一方で、相続税対策として今のうちに株式の経済的価値はBさんへ移しておきたい
「株式を贈与する=議決権も相手に渡る」と思われがちですが、民事信託(家族信託)を活用することで、議決権と経済的価値を切り分けることが可能です。
民事信託(家族信託)を使った解決スキームの全体像
信託とは、財産の管理・処分を特定の目的のために他者(または自己)に委託する法的な仕組みです(信託法第2条)。自社株に信託を設定することで、「議決権の帰属」と「経済的価値の帰属」を別々の人物に割り当てることができます。
| 役割 | 人物 | 内容 |
|---|---|---|
| 委託者 兼 受託者 | Aさん | 自社株を自己信託し、議決権を保有し続ける |
| 受益者 | 息子Bさん | 自社株から生じる経済的利益(配当等)を受け取る |
スキームの仕組みをステップで理解する
AさんはAさん自身を受託者として自社株を信託します(自己信託)。信託法第3条第3号により、委託者自身が受託者を兼ねる信託も有効に成立します。信託設定後、議決権は受託者であるAさんに帰属するため、株主総会での議決権行使はこれまでどおりAさんが行います。
信託財産(自社株)から生じる経済的価値(配当受領権や残余財産の受取権など)の受益者を息子Bさんに設定します。これにより、自社株の経済的価値がBさんへ移転します。
税務上、信託において受益者が変更された時点で、受益権が「贈与された」とみなされます(相続税法第9条の2第1項)。Bさんには自社株の評価額をもとに贈与税が課されますが、このタイミングで贈与が完了するため、その後の株価上昇分はBさんの財産として累積され、将来の相続税課税対象から切り離せます。
なぜ「今のうちに」贈与することが相続税対策になるのか
非上場株式(自社株)の評価は、国税庁が定める「財産評価基本通達」に基づいて算定されます。業績が好調な会社の株式は評価額が年々上昇しやすく、贈与や相続の時点での評価額が課税の基準となるため、評価額が低いうちに次世代へ移転しておくことが節税につながります。
- 財産評価基本通達(国税庁):取引相場のない株式の評価
- 信託法(法務省):信託法(平成18年法律第108号)
- 相続税法第9条の2(受益者等課税信託):相続税法(e-Gov法令検索)
この手法を使う際の注意点
- 自己信託は公正証書等による書面作成が必須です(信託法第3条第3号・信託法施行令第1条)。口頭では信託は成立しません。
- 信託設定後も受益者(Bさん)には贈与税の申告・納税義務が生じます。事前に税理士との連携が必要です。
- 信託の設計によっては会社法上の株主名簿の記載方法にも影響します。会社法第186条等に基づき、適切に処理する必要があります。
- 信託契約の内容が不適切な場合、税務当局から租税回避とみなされるリスクがあります。専門家による設計が不可欠です。
まとめ:議決権の保持と相続税対策の両立が可能
- 民事信託(家族信託)を使えば、議決権(経営権)を手放さずに自社株を後継者へ贈与することができる
- Aさんが委託者兼受託者、Bさんが受益者という設計で経済的価値のみを移転できる
- 税務上は受益権移転時に贈与税が課される(相続税法第9条の2)が、将来の株価上昇分を相続財産から切り離せるメリットがある
- 自己信託の設定・信託契約の作成には司法書士・税理士との連携が必要不可欠
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この記事を担当した司法書士

司法書士法人クオーレ
代表
鈴田 祐三
- 保有資格
司法書士・行政書士・宅地建物取引士
- 専門分野
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相続・遺言・生前対策・不動産売買
- 経歴
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立命館大卒。平成13年司法書士試験合格。平成19年に鈴田司法書 士事務所を開設。平成27年に司法書士法人クオーレを立ち上げ、 代表を務める。事務所開設以来、多数の相続の相談を受けており累 計相談件数1,400件以上の実績から相談者からの信頼も厚い。






















































