遺言の内容と異なる遺産分割協議をして、分配をしたケース
状況
不動産や預貯金を保有していた父親は令和元年に亡くなりました。
父親は、亡くなる10年前に自筆証書遺言を作成していました。
封筒に入っており、内容をうかがい知ることはできませんが、相続人である私たち兄弟は1/2ずつ財産を分配しようと思っています。
当事務所の提案と解決
本ケースでは、お父様が自筆証書遺言を作成していたので、まずは検認の手続きが必要となります。
「検認」とは、遺言の発見者や保管者が家庭裁判所に遺言を提出し、相続人に対して、遺言の存在及びその内容を知らせる手続きをいいます。
遺言の状態、日付、氏名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するために存在する制度で、有効性を判断するわけではありません。
本ケースのように、その遺言が封筒に入れられ封印されていることがありますが、このような場合に、検認手続きを経ずに勝手に遺言書を開封してしまうことは認められません。
法律上は、5万円以下の過料が科されることとされています。
検認の申し立てをすると、家庭裁判所から相続人全員に対して「検認期日」が通知させます。
申立人は必ず出席することが必要ですが、その他の相続人は必ずしも出席しなくても不利益を受けることはありません。
検認期日に家庭裁判所に行くと、出席した相続人の立ち会いのもとに遺言書が開封され、中身が確かめられます。
本ケースでは、両名立会いの下、遺言内容を確認すると、子どもがいない弟さんよりも、3人の子供を抱えるお兄さんに多めに遺産を分配したいという内容でした。
そんな中で、お兄さんは弟さんよりも財産を多くもらうことに抵抗があるため、遺言内容どおりではなく、平等に分けることはできないかというご相談を頂きました。
遺産分割協議を行えば、遺言内容と異なる遺産の分配をすることが可能となります。
ただし、条件を満たす必要がありますので、ご注意ください。
(1)遺言で遺産分割が禁止されていない
(2)相続人全員の合意が必要
(3)遺言執行者がいれば同意が必要
(4)相続人でない受遺者がいれば同意が必要
上記条件について解説はこちら
【参考までに判例をご紹介します】
■参考判決例 遺言と異なる遺産分割協議の効果
平成14年2月7日 埼玉地方裁判所 平成11(ワ)2300
特定の不動産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言がなされた場合には、当該遺言において相続による承継を当該相続人の受諾の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、被相続人の死亡の時(遺言の効力の生じたとき)に直ちに当該不動産は当該相続人に相続により承継される。
そのような遺言がなされた場合の遺産分割の協議又は審判においては、当該遺産の承継を参酌して残余の遺産の分割がされることは言うまでもないとしても、当該遺産については、上記の協議又は審判を経る余地はない。
以上が判例の趣旨である(最判平成3年4月19日第2小法廷判決・民集45巻4号477頁参照)。
しかしながら、このような遺言をする被相続人(遺言者)の通常の意思は、相続をめぐって相続人間に無用な紛争が生ずることを避けることにあるから、これと異なる内容の遺産分割が善相続人によって協議されたとしても、直ちに被相続人の意思に反するとはいえない。
被相続人が遺言でこれと異なる遺産分割を禁じている等の事情があれば格別、そうでなければ、被相続人による拘束を全相続人にまで及ぼす必要はなく、むしろ全相続人の意思が一致するなら、遺産を承継する当事者たる相続人間の意思を尊重することが妥当である。
法的には、一旦は遺言内容に沿った遺産の帰属が決まるものではあるが、このような遺産分割は、相続人間における当該遺産の贈与や交換を含む混合契約と解することが可能であるし、その効果についても通常の遺産分割と同様の取り扱いを認めることが実態に即して簡明である。
また従前から遺言があっても、全相続人によってこれと異なる遺産分割協議は実際に多く行われていたのであり、ただ事案によって遺産分割協議が難航している実情もあることから、前記判例は、その迅速で妥当な紛争解決を図るという趣旨から、これを不要としたのであって、相続人間において、遺言と異なる遺産分割をすることが一切できず、その遺産分割を無効とする趣旨まで包含していると解することはできないというべきである。
本ケースの遺言では、
(1)遺産分割協議が禁止されておらず、
(2)全相続人である兄弟が同意しており、
(3)お兄様が遺言執行者
となっていたため、兄弟が希望していたとおり、1/2ずつお父様の遺産を承継することができました。
【まとめ】遺言書と異なる方法で遺産を分割するには?
原則として、遺言書が残されている場合は遺産分割協議をせずに、その内容に沿って遺産を分配しなければなりません。
とはいえ、今回の相談者様のように遺言の内容とは違う方法で遺産を分けたい、という方もいらっしゃるかと思います。
そのような場合、次の条件を満たしていれば、遺言書があったとしてもその内容と異なる遺産分割協議を進めることが可能です。
遺産分割協議で遺言と異なる遺産分割を行う条件
1.遺言書で遺産分割協議が禁止されていない
大前提として、遺言書で遺産分割協議が禁止されていないことを確認しなければなりません。
これは民法第907条で下記のように規定されていることに基づきます。
「共同相続人は、被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。」
2.全相続人と相続人でない受遺者が合意している
また、財産を相続する方「全員」が遺言書と異なるやり方で遺産を分配することに合意していなければなりません。
実際の例として、相続人以外の方にも財産を遺贈する旨が書かれているケースがあります。
こういった時は、その方にも協議による遺産分割に同意いただく必要があります。
3.遺言執行者が合意している
遺言執行者とは、亡くなった方の遺言の内容を実現する手続きを行う人のことです。
場合によっては、遺言書で相続人以外の人を遺言執行者に指定していることがあります。この際は、遺言執行者の同意も必要です。
遺言書の存在を知らずに遺産分割協議を行った場合はどうなる?
遺産分割協議を終わらせたのに後から遺言書が見つかった、というケースもあります。
こんなとき、どのような対応をすれば良いのでしょうか?
原則的に、遺言書がある場合は遺産分割協議よりも優先されます。
したがって、済ませた遺産分割協議は無効となり、改めて遺言書の内容に従って遺産を再分配することになります。
しかし、前節で解説しました通り、全相続人の合意を得られれば一度終わらせた遺産分割協議をそのまま有効とすることも可能です。ただし、1人でも同意しない方がいる場合には遺言書の内容に沿って再分配しなければなりません。
「事前にちゃんと手を打っておけば良かった・・・」
当事務所はお客様にそのような悲しい想いをして欲しくはありません。
そのため、当事務所では単に遺言書の作成を代行するような業務ではなく、お客様が後悔しない最適な遺言を作成するためのサポートを考案いたしました。
上記サービスを「遺言コンサルティングサポート」という商品として用意させていただきました。
ひとつでもあてはまる方は当事務所へご相談ください
「遺言書は資産家が書くものであり、自分には関係ない」、「わが家は仲が良く、遺言書を残さなくても家族でうまく話し合ってくれる」などと考えている人もいます。
また、「自分はまだ遺言書を書く必要がない」と、相続についてまだ考えなくてもいいと先延ばしにしている人もいらっしゃいます。
遺言とは
遺言とは、遺言者の最終の意思を表したものです。
自分の財産について、誰に何を相続させるか、自由に決めることができます。
さらに、 財産に関する事項以外にも遺言で定めることができますが、遺言の内容に法律効果をもたらすことができる事項は、法律で決まっています。
この事項を『遺言事項』といいます。
なお、遺言は被相続人ごとに作成します。
また、遺言は、文字で残すことを原則とし、後日の改変が可能なビデオテープや録音テープなどは認められていません。
遺言の種類には、まず大きく普通方式の遺言と、特別方式の遺言に分けて定めています。
遺言を作成する際のポイント
遺言の種類によって法律で厳格に書き方が定められています。
せっかく書いた遺言書も、書式に不備があったことで、遺言書自体が無効になることがあります。
自筆証書遺言と公正証書遺言の書き方についての説明をいたしますが、きちんとした遺言書を作成したいのであれば、一度司法書士などの専門家にご相談することをお勧めします。
ご自身で遺言を作成すると…
ご自身で遺言を作成する方も多くいらっしゃいますが、適切に作成が出来ていないケースが多いことも見受けられます。
遺言の種類
公正証書遺言とは
公正証書遺言は、遺言者本人が公証役場に出向き、証人2人以上の立会いのもとで、遺言の内容を話し、公証人が筆記します。
公正証書遺言のサンプル
自筆証書遺言とは
本人が、本文の全文・日付・氏名を自筆で書いた書面に捺印したものです。
用紙は何でも構いませんが、ワープロ文字や代筆は認められず、必ず自分で全文を書くことが必要となります。
遺言の書き直しについて
遺言は作成した後も書き直しが可能です。
現状の家族状況や財産状況により内容を追加・修正する事も可能ですので作成して終わりではなく、しっかり内容を確認することが重要です。
当事務所の遺言作成者の平均年齢
当事務所にご依頼いただいた方の遺言作成の平均年齢は78歳でした。早いうちから遺言を準備しておくことで、親族の負担は軽減できます。
遺言コンサルティングサポートの無料相談受付中!
当事務所は、初回相談を完全無料で承ります。
相続手続きや遺言書作成、成年後見など相続に関わるご相談は当事務所にお任せください。
当事務所の司法書士が親切丁寧にご相談に対応させていただきますので、まずは無料相談をご利用ください。
予約受付専用ダイヤルは0120-7584-02になります。
お気軽にご相談ください。
電話受付:10:00~19:00(平日)10:00~17:00(土日祝)
遺言コンサルティングサポートとは
遺言コンサルティングサポートとは、お客様の現状や希望を確認し、遺言内容のアドバイスや提案、実際の作成手続きも実施するサポートです。
●遺言内容にアドバイスが欲しい
●自分の家族や親族の状況に最適な遺言書を作ってほしい
●家族が揉めない遺言書を作ってほしい
といった方にお勧めのサポートとなっております。
遺言書作成の代行だけするということではなく、相続の専門家が遺言書の内容を確認し、相談者様に最適な遺言書の内容で提案をさせていただきます。
サポート内容
① 相談者の現状や希望、目的の確認
② 財産調査(路線価格の平米単価又は倍率の確認、不動産取得税・登録免許税の算出、不動産評価証明書と登記事項証明書の取得)
➂ 各種生前対策の検討(検討した上で「遺言」が最適な場合に実施)
④ 遺言内容のアドバイスや提案
⑤ 相談者が希望する手続に関連する注意点や手法などを資料化して提案(企画書にて提示)
⑥ 予備的遺言や付言事項を確認
⑦ 遺言作成に必要な手間を全て代行
⑧ 遺言書の作成
遺言コンサルティングサポート
遺言コンサルティングサポートとは、お客様の現状や希望を確認し、遺言内容のアドバイスや提案、実際の作成手続きも実施するサポートです。
当事務所では単に遺言書の作成を代行するような業務ではなく、お客様が後悔しない最適な遺言を作成するためのサポートを実施しております。
「遺言内容にアドバイスが欲しい」「自分の家族や親族の状況に最適な『遺言書』を作ってほしい」といった方にお勧めのサポートとなっております。
相続財産の価額 | 報酬額 |
---|---|
2,000万円未満 | 165,000円(税込) |
2,000万円~4,000万円未満 | 220,000円(税込) |
4,000万円~6,000万円未満 | 275,000円(税込) |
6,000万円~8,000万円未満 | 330,000円(税込) |
8,000万円~1億円未満 | 385,000円(税込) |
1億円~ | 要見積もり |
※ 公正証書遺言を作成する場合、当事務書の報酬と別に公証役場の手数料が必要になります。
※ 急を要する場合、通常の業務に優先して業務を行う必要がある場合は、報酬が一定割合加算されます。
遺言執行サポート
サービス内容 | 費用 |
---|---|
遺言執行サポート | 遺産総額の1%(最低報酬20万円~) |
※ 遺産額に関わらず、報酬は最低20万円からとなります。
※ 諸証明発行等の実費は別途かかります。
また、まとめサイト等への無断引用を厳禁いたします。
この記事を担当した司法書士
司法書士法人クオーレ
代表
鈴田 祐三
- 保有資格
司法書士・行政書士・宅地建物取引士
- 専門分野
-
相続・遺言・生前対策・不動産売買
- 経歴
-
立命館大卒。平成13年司法書士試験合格。平成19年に鈴田司法書 士事務所を開設。平成27年に司法書士法人クオーレを立ち上げ、 代表を務める。事務所開設以来、多数の相続の相談を受けており累 計相談件数1,400件以上の実績から相談者からの信頼も厚い。