不動産(土地や家)の相続手続きを完全網羅!!~費用や流れも解説~
不動産を相続する場合の手続きの流れや費用(相続税など)について
不動産の相続手続きの大まかな流れ
不動産を相続するときには、まず、不動産を含めた遺産をどう分けるかについて、相続人全員による「遺産分割協議」で話し合う必要があります。不動産は現金や預金のように簡単に分けられません。相続人間で公平に分配するためには、分け方を工夫しなければならないことがあります。亡くなった人(被相続人)が遺言書を残していれば、遺産分割協議は不要です。
不動産を相続する人が決まったら、「相続登記」を行います。相続登記とは、法務局で登記されている不動産の所有者名義を変更する手続きです。相続した不動産を売却する場合でも、相続登記はすませておく必要があります。
遺産を相続したら、相続税がかかることがあります。相続税がかかるケースでは、期限までに必ず申告・納税の手続きを行わなければなりません。相続税の申告期限までに遺産分割が終わっていない場合には、法定相続したものとして、法定相続人全員が相続税の申告を行う必要があります。
実施事項①:不動産の分割方法を考える
相続人が複数いる場合、遺産の中に土地や建物といった不動産が含まれていれば、分割方法に悩むことがあります。不動産は現金や預金のようにうまく分けられるものではありません。不動産を相続人間で公平に分割するためには、分け方を工夫する必要があります。
遺産分割のために用いられる方法には、「現物分割」「換価分割」「代償分割」「共有分割 」の4つがあります。以下、それぞれどのような分割方法なのかについて説明します。
方法①:現物分割とは
現物分割とは、財産をそのままの状態で分配する方法です。たとえば、遺産として不動産、株式、預貯金があり、相続人が被相続人の妻、長男、次男の3人である場合に、妻が不動産、長男が株式、次男が預貯金という形で相続する方法が現物分割になります。
現物分割は、最も単純でわかりやすい遺産分割の方法です。現物分割には、次のようなメリットがあります。
・遺産を売却したり、遺産の価値を厳密に評価したりする手間がかからない
・相続人全員が納得しさえすればすぐに分けられる
・財産を共有名義にする必要がなく、誰のものかをはっきりさせられる
・遺産の分配後は各相続人が相続した財産を売却するかどうか自由に決められる
遺産が現金や預金だけなら、現物分割により公平な遺産分割が可能です。一方、遺産に不動産が含まれる場合には、現物分割が困難なケースが多くなります。
たとえば、遺産が不動産1個しかないのに相続人が何人もいるという場合には、現物分割は難しいでしょう。現物のままだと相続分どおりにきっちり分けられないケースもあります。あいまいな評価にもとづき分配しようとすると、相続人の中に不満を持つ人が現れ、もめることになってしまいがちです。
方法②:換価分割とは
換価分割とは、遺産を売却してお金に換え、そのお金を相続人の間で分配する方法です。不動産を換価分割する場合には、次のようなメリットがあります。
・不動産を現金化することにより公平に分けられる
・不動産を誰も欲しがらない場合でも分けられる
・不動産の評価をめぐって争いになることもない
換価分割をするときには、「相続人全員が換価分割に合意していること」及び「売却代金を分配する割合」を明記した遺産分割協議書を作成しておきます。売却の前提として不動産は相続人全員の共有名義に変更しなければなりませんが、便宜上相続人の代表者の単独名義に変更することも可能とされています。
換価分割を行った場合、不動産の売却代金から取得費(購入時の代金)と譲渡費用(売却の経費)を差し引いてプラスになる場合には、譲渡所得税の課税対象となります。相続した不動産の場合、値上がりしていて、譲渡所得税がかかるケースが多くなります。
譲渡所得税が課税されるケースでは、相続人全員が取得した代金に応じて税金を負担しなければなりません。なお、相続開始から3年10か月以内に売却した場合には、払った相続税の一部を取得費に加算できるので、税金を抑えられます。
方法③:代償分割とは
代償分割とは、相続人の一部の人が遺産の現物を取得する代わりに、他の相続人に代償金を払うことによって、各相続人の取得額が公平になるよう調整する方法です。
たとえば、遺産が自宅不動産のみで長男と長女の2人が相続人であるケースでは、長男が自宅を相続し、長女に自宅の評価額の2分の1の現金を払えば、長男も長女も相続分どおりの財産を取得したことになります。
不動産を代償分割により分けることには、次のようなメリットがあります。
・不動産を共有にしなくてすむ
・不動産をどうしても欲しい人が単独でもらうことも可能になる
・代償金の金額を調整することで公平な分配ができる
代償分割では、不動産の評価額によって代償金の額が変わります。代償分割における不動産の評価方法については明確なルールがあるわけではなく、評価額をめぐって相続人間で争いになってしまうことがあります。また、そもそも代償金を払う人が現金を用意できなければ、代償分割は困難です。
なお、代償金として現金などを受け取った場合、贈与とみなされ贈与税が課税される可能性があります。代償分割をする場合には、遺産分割協議書に代償分割を行う旨を明記して残しておくようにしましょう。
方法④:共有分割とは
共有分割とは、遺産を共有する形で遺産分割の合意をする方法です。相続開始後遺産分割が完了するまでも遺産は相続人全員の共有状態ですが、これは「遺産共有」と呼ばれる特殊な共有状態です。遺産分割により遺産共有を通常の「物権共有」の状態にするのが共有分割になります。
不動産が遺産共有のままであれば、共有状態を解消する前に遺産分割を経なければなりません。年数が経過して、共有者に次の相続が発生していれば、遺産分割の手続きは複雑になって しまいます。相続した不動産を共有にしたい場合でも、相続発生後速やかに遺産分割協議を行って、物件共有の状態にしておくのが安心です。
相続人全員が希望しており、不動産を共有にしても大きな不都合が生じない状況なら、遺産分割協議で共有分割の合意をしてもかまいません。しかし、共有分割は基本的に、現物分割、換価分割、代償分割のいずれも不可能な場合の最終手段と考えるべきです。
不動産を共有にした場合、売却等により処分するにも共有者全員の合意が必要になり、不動産を思うように活用できません。将来共有者に相続が発生すれば、共有者が増え、ますます合意が難しくなります。先々に問題を持ち越したくないなら、他の方法で遺産分割した方がよいでしょう。
実施事項②:不動産の名義を変更する(相続登記)
遺産分割により不動産を相続する人が決まったら、名義変更手続きが必要です。不動産の所有者名義を変更する手続きは、相続登記と呼ばれます。相続登記は、不動産の所在地を管轄する法務局に、登記申請書やその他の必要書類を提出して行います。相続登記には手間や費用がかかりますが、放置しておくと後日手続きするときに余計な手間や費用がかかってしまいます。不動産の相続が発生したら、速やかに相続登記をすませておきましょう。
相続登記とは
・不動産を相続人名義に変更すること
相続登記とは、相続によって不動産の名義が変わる場合に行う名義変更手続きのことです。不動産についての情報は、取引の安全のため、法務局で登記されています。誰もが法務局で登記事項証明書を取得して、不動産の所有者は誰なのか、抵当権などの権利が付いていないかなどを確認できるしくみになっているのです。
相続が発生すると、不動産の所有者が変わるため、法務局で所有権移転登記を行って所有者を変更する必要があります。この相続を原因とする所有権移転登記のことを一般に相続登記と言います。
・相続登記が必要な理由
不動産を相続しても、相続した人が相続登記を行う法律上の義務はありません。相続登記をしなくても、罰則やペナルティを受けることはありません。
しかし、不動産を所有していても、所有者として登記されていなければ、第三者に対し「自分が所有者である」ということを主張できません。不動産を売却するにも、不動産を担保にお金を借りるにも、所有者として登記されていることは必須になります。相続登記をしていなければ、不動産を持っていても活用できないので、事実上登記せざるを得ないということです。
・相続登記の期限
相続登記は法律上の義務ではないので、手続きの期限も設定されていません。しかし、相続登記をせずに放置しておくことにはデメリットがあります。不動産を相続したときには、できるだけ早い時期に相続登記をしておくのがおすすめです。
登記の際にはいろいろな書類が必要になりますが、何年も経過してから相続登記をしようとした場合、必要書類がすぐに揃わないことがあります。また、年数が経つと、当初の相続人が亡くなって次の相続が発生し、権利関係も複雑化しがちです。
相続登記をずっとしないというわけにはいきません。いずれしなければならないなら、できるだけ早い時期に手続きした方が、余計な手間や費用をかけずにすみます。
相続登記の手続きの流れとは?
相続登記の大まかな流れは、次のとおりです。
1. 相続人・相続財産調査
最初に相続人・相続財産調査を行って、亡くなった人の相続人が誰なのか、残した財産としてはどんなものがあるのかを明確にします。
相続人調査では、役所で被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取得し、相続人に該当する人の戸籍まで追っていきます。場合によっては故人の出生前の戸籍まで遡らなければならないこともあります。
相続財産調査では財産の内容を調べます。不動産については正確な所在をつきとめ、登記事項証明書を取得しておきます。
2. 不動産を相続する人を決める
相続人全員で遺産分割協議を行って、遺産の分配について話し合います。不動産については、誰が取得するかを決めます。ただし、次の①、②の場合には遺産分割協議を経ることなく相続登記ができます。
①法定相続による登記を行う場合
②被相続人が遺言書で不動産を相続する人を指定している場合
もし相続人同士の話し合いで遺産分割ができない場合には、家庭裁判所の遺産分割調停や遺産分割審判を利用して遺産分割をする方法があります。
3. 遺産分割協議書の作成
遺産分割協議が成立したら、話し合いで決まった内容を遺産分割協議書という書面にします。遺産分割協議書は相続登記の際に添付するので、不動産については登記事項証明書どおりの記載をして特定します。
遺産分割協議書には、各相続人が署名し、実印を押した上で、印鑑証明書も添付します。
4. 登記申請の準備
定められた書式に従って、登記申請書を作成します。また、登記申請に必要な書類で足りないものを揃えます。
5. 登記申請
不動産の所在地を管轄する法務局に登記申請書と添付書類を提出し、相続登記を申請します。窓口に書類を持参する方法のほか、郵送で申請する方法、オンライン申請する方法もあります。
6. 登記完了
登記申請から1週間程度で登記完了です。登記完了書類を受け取り、必要に応じて登記事項証明書を取得します。
相続登記に費用はかかる?
相続登記でかかる費用の主なものは、登録免許税と司法書士報酬の2つです。
登録免許税とは、登記申請をする際に、国に払わなければならない税金です。相続登記の場合、不動産の固定資産評価額の1000分の4(0.4%)の登録免許税がかかります。ちなみに、不動産を法定相続人以外の人が取得する場合には、相続ではなく遺贈ということになり、登録免許税は1000分の20(2%)になります。
司法書士報酬は、相続登記の手続きを司法書士に依頼した場合にかかる費用です。司法書士報酬には一律の基準がなく、依頼する事務所によって報酬は変わります。物件の数や事件の難易度によっても報酬は変わってくるので、事前に見積もりしてもらうとよいでしょう。
その他にかかる費用としては、役所などで書類を取得する際の手数料などがあります。たとえば、登記事項証明書の取得手数料として不動産1個につき600円、住民票や印鑑証明書の取得手数料として1件につき200~400円程度がかかります。
相続登記に必要な書類とは
相続登記には、①遺産分割協議、②遺言書、③法定相続の3つのパターンがあり、必要書類もそれぞれのパターンで違います。
■どのパターンでも必要な書類
・登記申請書
定められた書式どおりに作成しないと受け付けてもらえません。書式は法務局のホームページでも確認できます。
・被相続人の住所証明書
被相続人の最後の住所地を証明するものが必要です。
・固定資産評価証明書または課税明細
登録免許税の計算のため、不動産の固定資産評価額が記載されたものが必要です。役所で固定資産評価証明書を取得するか、固定資産税の納税通知書に付属の課税明細の写しを用意します。
・委任状
登記申請を代理人(相続人の代表者や司法書士)に依頼する場合には、委任状が必要です。
・不動産を取得する人の住民票
■①遺産分割協議による相続登記の必要書類
・遺産分割協議書
遺産分割協議書には相続人全員の署名と実印による押印が必要です。
・相続人全員の印鑑証明書
遺産分割協議書の実印の確認のため、相続人全員の印鑑証明書を添付します。この場合の印鑑証明書は、3か月以内のものでなくてもかまいません。
・戸籍謄本
被相続人と相続人全員との関係がわかる戸籍謄本がすべて必要です。相続関係説明図を一緒に提出すれば、戸籍謄本の原本を還付してもらえます。
■②遺言書による相続登記の必要書類
・遺言書自筆証書遺言の場合には検認済証明書が付いたもの、公正証書遺言の場合には正本または謄本を添付します。
・印鑑証明書
不動産を取得する人が法定相続人以外の場合 には、遺言執行者が選任されていれば遺言執行者、遺言執行者がいなければ相続人全員の印鑑証明書が必要です。印鑑証明書は3か月以内のものでなければなりません。
・戸籍謄本
被相続人の死亡時の戸籍謄本と不動産を相続する人の現在の戸籍謄本が必要です。
■③法定相続による相続登記の必要書類
・戸籍謄本
被相続人と相続人全員との関係がわかる戸籍謄本がすべて必要です。相続関係説明図を一緒に提出すれば、戸籍謄本の原本を還付してもらえます。
コラム)相続登記は自分(一人で)できるのか
相続登記をするには、登記申請書を作成し、添付書類と一緒に法務局に提出すればOKです。インターネットで調べたり、法務局に相談したり自分ですることも不可能ではありません。
しかし、相続登記を自分ですると、余計な手間や時間がかかってしまいがちです。
相続登記で必要な戸籍謄本の数は膨大になることがあります。通常は複数の役所から取り寄せなければならず、これを揃えるだけでも一苦労です。
また、「父の不動産を相続したら、祖父名義のままだった」というように、過去の相続登記がされていないケースもあります。この場合には、過去の相続登記から順番に行わなければならず、ますます手続きが複雑になります。
相続登記は書面審査だけですが、必要な書面がすべて揃っていなければ受け付けてもらえません。何度も申請をやり直ししなければならないこともあります。
余計な手間を省いて名義変更をスムーズに完了させるために、相続登記は司法書士に相談するのがおすすめです。
不動産の相続にかかる相続税とは
不動産を相続したら相続税がかかる可能性がある
不動産の相続では、相続税についても意識しておく必要があります。被相続人が残した財産の総額が次の計算式で算出される基礎控除額を超える場合には、相続や遺贈により財産を取得した人に相続税がかかります。
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
相続税の基礎控除額は2015年(平成27年)に引き上げられました。そのため、以前は相続税の課税対象にならなかったケースでも、現在では対象になることがあります。遺産の中に不動産が含まれる場合には、基礎控除額を超えることも多く、相続税がかかる可能性があります。
相続税がかかるケースでは、被相続人の生前から対策をしておくことを検討しましょう。不動産の相続税評価額は、相続対策をすることにより大幅に下げることも可能です。不動産の評価額を下げることにより、遺産が基礎控除額以下になれば、相続税自体かかりません。たとえ基礎控除額を超える遺産があったとしても、評価額が下がった分、税負担は軽くなります。
不動産の相続にかかる相続税とは
・不動産を相続したときにかかる税金の種類
不動産を相続した場合にかかる税金としては、以下のようなものがあります。
相続税 不動産を含めた遺産全体の規模が一定以上の相続において、財産を取得した人にかかる税金
登録免許税 相続登記を申請するときにかかる税金
譲渡所得税 相続した不動産を売却した場合にかかる税金
固定資産税 相続した不動産の所有者に毎年課税される税金
なお、不動産を取得した人にかかる地方税として不動産取得税がありますが、相続による取得の場合には不動産取得税は非課税です。
・相続税がかかるケース
相続税は不動産を取得したら必ずかかるものではありません。被相続人の遺産全体の金額が基礎控除額を超えるかどうかで、相続税の課税の有無が決まります。遺産全体の金額が基礎控除額を超える場合、原則としてその相続において財産を取得した人全員に、相続税がかかります。
たとえば、法定相続人の数が3人の場合、基礎控除額は4,800万円なので、4,800万円を超える遺産があれば相続税の課税対象になります。不動産などの遺産をもらった人は、もらった財産の額に応じて相続税を負担しなければなりません。
・相続税の申告期限
相続税には申告期限があります。相続税がかかるケースでは、相続開始があったことを知った日の翌日 から10か月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する税務署に申告書を提出しなければなりません。もし期限までに申告しなかった場合には、延滞税、無申告加算税などのペナルティ分の税金も課されてしまいます。
申告期限までに遺産分割が終わっていない場合でも、相続税の申告は必要です。この場合には、相続人は法定相続により相続が行われたものとして相続税の申告をすることになります。ただし、相続税の申告書と一緒に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておけば、遺産分割完了後、申告期限から3年以内に申告のやり直しをして、払い過ぎの税金の還付を受けることも可能になります。
不動産の相続にかかる相続税の計算方法
相続税は、不動産の価格を基準に金額が決まるものではありません。遺産全体の価格からその相続における相続税の総額を計算し、それを相続人(受遺者等も含む)全員で割り振る形になります。相続税計算の大まかな流れは、次のとおりです。
1. 「課税価格の合計額」を出す
不動産を含むすべての遺産の相続税評価額の合計を出します。相続開始前3年以内の生前贈与や生命保険金など、純粋な遺産以外にも含めなければならない財産があります。債務や葬式費用は差し引きできます。
2. 「課税遺産総額」を計算
1で計算した「課税価格の合計額」から基礎控除額を差し引きし、「課税遺産総額」を出します。
3. 「相続税の総額」を計算
2で計算した「課税遺産総額」を法定相続に従って分配したものと仮定し、税率をかけて各相続人の仮の相続税額を出します。仮の相続税額を合計したものが「相続税の総額」です。
4. 「相続税の総額」を相続人で分ける
「相続税の総額」を実際に取得した財産額で按分する形で分け、各人の相続税額を決定します。
配偶者、子供、親以外の人は、最終的に算出された相続税額から2割加算されます。配偶者については、法定相続分もしくは1億6,000万円以下の相続なら、相続税はかかりません。
不動産の相続に際して相続税以外でかかる費用はある?
・不動産を相続しても相続税がかかるとは限らない
不動産を相続しても、必ず相続税がかかるわけではありません。相続税の課税の有無は、遺産全体の金額で決まります。遺産をすべて合わせても基礎控除額を下回る場合には、たとえ不動産を相続しても、相続税はかかりません。
・不動産の相続で必ずかかるのは登録免許税
不動産を相続した場合に必ずかかる費用は、相続登記をするときの登録免許税です。法務局に相続登記の申請書を提出するときには、登録免許税を収入印紙で納めなければなりません。登録免許税の金額は、相続する不動産の固定資産評価額の1000分の4、すなわち0.4%になります。ただし、法定相続人以外の人が不動産を取得する場合には、固定資産評価額の1000分の20、すなわち2%となります。
・手続きを司法書士に依頼したら司法書士費用もかかる
相続登記の手続きは複雑になることが多いので、司法書士に依頼するのが一般的です。相続登記を司法書士に依頼した場合には、司法書士の報酬が追加でかかります。司法書士の報酬の金額は、相続する不動産の個数や金額、依頼する事務所によって変わります。
・不動産を売却する場合でも費用はかかる
相続した不動産を売却して処分する場合でも、一旦相続人名義に変更する必要があるので、相続登記の費用はかかります。さらに、相続した不動産が、被相続人の取得当時よりも値上がりしていれば、売却後に譲渡所得税がかかります。
譲渡所得税が発生するケースでは、売却した翌年に確定申告を行って、税金を納めればなりません。なお、要件をみたしていれば3,000万円の特別控除が受けられることもありますが、特別控除で税額がゼロになる場合でも確定申告は必要です。
不動産種別(土地、戸建て、マンション)の相続の手続きと相続税について
不動産には、土地、戸建て、マンションといった種類があります。相続手続きの仕方は、不動産の種類によって変わるわけではありません。どんな不動産でも、遺産分割協議を行って不動産を相続する人を決めたら、法務局で相続登記を申請して名義変更するという流れになります。
なお、遺産のトータルの額が相続税の基礎控除額を超える場合には、その相続で財産を取得した人全員が相続税の課税対象になるので、不動産を相続した人にも相続税がかかります。相続税がかかるケースでは、不動産の相続税評価額を出さなければなりません。不動産相続税評価額の出し方は、不動産の種類(宅地、農地、建物など)や不動産の使用状況(他人が使用しているかなど)によって変わってきます。
以下、不動産の種類別に相続手続きの流れを説明し、相続税評価額の出し方についても簡単に説明します。なお、相続税評価額の計算方法については、細かいルールがあるため、税理士に相談してください。
土地のみを相続する場合のチェックポイント
土地を相続する場合の手続きや方法
土地を相続する場合には、次のような流れになります。
1.相続人・相続財産調査をする
戸籍謄本を取り寄せて相続人を確認し、遺産の状況も調べます。土地の正確な場所がわからない場合には、役所で名寄帳(固定資産課税台帳)を閲覧して調べます。土地の所在がわかったら、法務局で登記事項証明書を取得しておきます。
2. 遺産分割協議をする
相続人全員で遺産分割協議を行い、土地を相続する人を決めます。遺産分割協議で話し合いがまとまったら、遺産分割協議書を作成します。相続人が1人の場合もしくは遺言で土地をもらう人が指定されている場合には、遺産分割協議は不要です。
3. 相続登記をする
法務局で相続登記を行って名義変更をします。
土地の相続にかかる相続税と計算方法
相続税は土地のみの価格から計算するわけではなく、遺産全体の額から計算します。遺産全体の額が基礎控除額以下の場合には、その相続は相続税とは無関係となり、土地を相続した人にも相続税はかかりません。
遺産の中に土地が含まれている場合には、土地の相続税評価額を出す必要があります。土地の相続税評価額は、時価(売却価格)と同じではありません。宅地の場合には「路線価方式」と「倍率方式」の2つの方式があり、路線価が設定されている地域では路線価方式、それ以外の地域では倍率方式を使います。
①路線価方式
国税庁のホームページにも掲載されている路線価図により、1平方メートルあたりの路線価を調べます。これに土地の面積をかけ、土地の形状等による補正を加えて相続税評価額を出します。
②倍率方式
土地の固定資産評価額に国税局が定めた一定の倍率(主に1.1)をかけて相続税評価額を出します。
上記の方式で算出された相続税評価額は、土地を自分で使っていた場合の評価額(自用地評価額)で、時価の8割程度です。土地を他人に貸している場合や土地の上に賃貸マンション・アパートを建てている場合には、土地の評価額がさらに下がります。また、土地が農地や山林の場合には、宅地とは評価方法が異なります。
土地の評価額とその他の財産の評価額を合わせた遺産の総額から基礎控除額を差し引きして課税遺産総額を出します。相続税は、課税遺産総額をもとに計算することになります。
土地の相続における注意点 300
遺産の中に土地がある場合、土地をそのまま相続したのでは土地の評価額が高額になり、相続税の負担が大きくなることがあります。土地の評価額は、相続対策により下げられます。たとえば、土地の上に賃貸アパートを建てると、土地の評価額が下がり、相続税も軽減できます。土地を持っている場合には、事前の相続対策が重要です。
土地を相続すると、翌年から毎年固定資産税を払わなければなりません。また、土地の所有者には土地の管理責任もあります。土地の上に建っている建物が壊れるなどして他人にケガをさせた場合には、土地の所有者に損害賠償責任が発生します。土地を相続しても使わない場合には、売却等して処分することも検討しましょう。
戸建て物件を相続する場合のチェックポイント
戸建てを相続する場合の手続きや方法
戸建て物件の場合には、通常は同じ人が土地と建物をセットで相続することになります。土地と建物を別の人が相続することも不可能ではありませんが、トラブルの元になるので避けた方が無難です。
戸建て物件を相続する場合の流れは、次のようになります。
1. 相続人・相続財産調査をする
役所で戸籍謄本を取り寄せて相続人を調べ、遺産の状況も調べます。戸建て物件については、法務局で土地・建物の登記事項証明書を取得しておきます。
2. 遺産分割協議をする
相続人全員で遺産分割協議をし、戸建て物件を誰が相続するかを話し合います。遺産分割協議の結果は、遺産分割協議書にまとめます。相続人が1人だけの場合や、遺言で戸建て物件を相続する人が指定されている場合には、遺産分割協議は不要です。
3. 相続登記をする
戸建て物件については、土地、建物の2件の相続登記申請が必要です。法務局で土地、建物の相続登記を申請し、どちらも相続人名義に変更します。
戸建てを相続にかかる相続税と計算方法
戸建てを相続して相続税がかかるかどうかは、遺産の総額によります。遺産の総額が基礎控除額を超える場合には、その相続で財産をもらった人に相続税がかかるので、戸建てを相続した人にも相続税がかかります。
遺産の中に戸建て物件がある場合には、土地、建物それぞれの相続税評価額を計算しなければなりません。
①土地について
路線価方式(路線価を基準にする方式)または倍率方式(固定資産評価額に所定の倍率をかけて計算する方式)で評価額を出します。
戸建てが貸家の場合には、評価額を減額できます。また、戸建てが被相続人の自宅または事業用店舗である場合、要件をみたしていれば「小規模宅地等の特例」が適用され、敷地の評価額を最大8割減額できます。
②建物について
固定資産評価額が相続税評価額になります。戸建てが貸家の場合には、評価額を減額できます。
戸建て物件の評価額が出たら、他の財産の評価額と合わせて、遺産の総額を計算します。遺産の総額から基礎控除額を差し引きした金額が、相続税計算の基準となる「課税遺産総額」です。
「課税遺産総額」を法定相続分で各相続人に分け、税率をかけて各相続人の仮の相続税額を計算します。各相続人の仮の相続税額を合計したものが「相続税の総額」です。実際の相続税額は、「相続税の総額」を実際に取得した財産の金額で按分したものです。ただし、相続する人によって、税額が軽減されたり、2割加算されたりする場合があります。
戸建てを相続における注意点
戸建てを相続する場合、他に財産がないのに相続人が複数いれば、争いになってしまうことがあります。戸建ての場合、土地と建物を別々の人が相続すると、売りたくなっても売れないなど、将来的にトラブルになる可能性が非常に高くなります。一方で、1人が戸建てを相続してしまうと、他の人が相続するものがなくなってしまうという問題もあります。
戸建てを相続したい人が代償金を払うことができれば、代償分割が可能です。戸建てを相続したい人は、将来の相続に備えて代償金を用意しておくと安心でしょう。代償金が用意できない場合には、被相続人が戸建てを相続したい人を受取人にした生命保険に入るという方法もあります。生命保険金は受取人固有の財産なので、遺産分割の対象に含めなくていいからです。
戸建てを誰に相続させるかについて、被相続人に遺言を用意してもらう方法もあります。この場合にも、他の相続人の遺留分の問題があるので、家族間で十分な話し合いが必要でしょう。
戸建てを相続した人がそこに住む予定がない場合でも、所有者である限り固定資産税を負担しなければなりません。古い空き家の場合、管理をきちんとしていないと「特定空き家」に指定されてしまう可能性があります。特定空き家になると、通常受けられる固定資産税の減額措置が受けられず、税負担も重くなってしまいます。相続した戸建てに住む予定がない場合には、売却等して処分するか、建物の解体を検討するのがおすすめです。
マンションを相続する場合のチェックポイント
マンションを相続する場合の手続きや方法
分譲マンションは建物に土地の利用権(敷地権)が付いたものなので、マンションを相続する場合には、建物と土地の利用権が一体化したものを取得することになります。
相続人が1人である場合や、遺言でマンションを相続する人が指定されている場合を除き、相続人全員による遺産分割協議でマンションを取得する人を決める必要があります。マンションを取得する人が決まったら、法務局で相続登記を行ってマンションの名義を変更します。
マンションの相続にかかる相続税と計算方法
・マンションを相続して相続税がかかるケースとは?
被相続人の残した財産の総額が基礎控除額を超える場合には、マンションを相続した人にも相続税がかかります。
・マンションの相続税評価額の計算方法
遺産の中にマンションがある場合には、マンションの評価額を出す必要があります。マンションには土地と建物とが含まれるため、土地の評価額と建物の評価額を合計したものがマンションの評価額になります。
土地については、路線価方式または倍率方式で評価額を計算します。マンションの場合、敷地の全部に対して権利があるわけではなく、持分が設定されています。登記事項証明書に持分割合が記載されているので、土地全体の評価額に持分割合をかけて持分の評価額を出します。なお、土地については小規模宅地等の特例により評価額を減額できる場合があります。
建物については固定資産評価額が相続税評価額になるので、固定資産税の納税通知書に付属の課税明細を見るか、役所で固定資産評価証明書を取得すれば確認できます。
・相続税の計算方法
マンションも含めた遺産の総額から基礎控除額を差し引きして「課税遺産総額」を出します。課税遺産総額を法定相続で分ける形で各相続人の仮の相続税額を出し、これを合計して「相続税の総額」を出します。相続税の総額を、実際に相続した財産額に比例するように分けると各人の相続税額が決まります。ただし、相続人によって、税額が軽減・加算されることがあります。
マンションの相続における注意点
マンションも共有にするのは避け、1人がマンションを相続する形にするのがおすすめです。マンション以外に財産がない場合には、代償分割を検討しましょう。相続したマンションを売却する場合でも、一旦相続人名義に変更する必要があります。
被相続人が所有していた賃貸マンションを相続した場合には、相続人が賃貸人の地位を引き継ぐことになります。この場合、家賃収入を得られることになりますが、賃貸人の義務も負わなければなりません。
また、他人に貸している建物の相続税評価額は低くなるので、賃貸マンションがあれば相続税が安くなることがあります。土地を所有している場合の相続対策として、賃貸マンションを建てる方法は一般によく行われています。
コラム)小規模宅地の特例とは
相続税の節税のためにぜひ活用したいのが「小規模宅地等の特例(小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例)」です。小規模宅地等の特例が適用できると、高額になりがちな土地の評価額を8割減額し、本来の評価額の2割にできます。被相続人名義の自宅がある場合には、遺産分割の前に特例の適用条件を確認しておきましょう。
小規模宅地の特例とは
小規模宅地等の特例は、被相続人の自宅の敷地または事業・貸付用に使っていた土地について、相続税評価額を大幅に減額できる特例です。自宅や店舗の評価額が高ければ、相続税の負担が重くなり、納税のためにその自宅や店舗を売却しなければならないことにもなってしまいます。自宅の確保や事業の継続を図るために設けられているのが小規模宅地等の特例です。
小規模宅地の特例のポイント
相続した土地が「特定居住用宅地等」や「特定事業用宅地等」に該当する場合、一定面積までは、土地の評価額が減額になります。
■特定居住用宅地等
被相続人または同一生計の親族の居住用に利用されていた宅地を親族が取得した場合、次の①~④の要件のいずれかをみたせば特定居住用宅地等に該当し、330平方メートルまでの部分の評価額を80%減額できます。
①被相続人の配偶者が土地を取得(居住や所有の継続は不要)
②被相続人の同居親族が取得(申告期限まで所有かつ居住が必要)
③被相続人に配偶者・同居親族がいないケースで、過去3年間家を所有しておらず、配偶者・3親等以内の親族・特別な関係のある法人の所有する家にも住んだことがない親族が取得(申告期限までの所有が必要)
④被相続人と同一生計の親族が取得(申告期限まで所有かつ居住が必要)
■特定事業用宅地等
被相続人が事業に使っていた宅地を親族が取得した場合、次の要件のいずれかをみたせば「特定事業用宅地等」に該当し、400平方メートルまでの部分の評価額を80%減額できます。
①被相続人の事業を引き継ぐ親族が取得(申告期限まで所有かつ事業継続が必要)
②被相続人の生前に同一生計の親族の事業に使われていた土地をその親族が取得(申告期限まで所有かつ事業継続が必要)
※上記以外に、相続した土地が同族会社の事業用に使っている宅地で「特定同族会社事業用宅地等」に該当する場合、不動産貸付用の宅地で「貸付事業用宅地等」に該当する場合の評価額減額もあります。
小規模宅地の特例の注意点
自宅などの土地について小規模宅地等の特例の適用が受けられると、土地の評価額を8割減額できます。ただし、小規模宅地等の特例には、対象となる土地を相続する人の要件が設けられている点に注意が必要です。
同じ土地でも、誰が相続するかによって特例の適用の可否が変わってきます。相続税の負担を軽くしたいなら、遺産分割をするときに、小規模宅地等の特例が受けられるような形で分けるのがおすすめです。
<相続した不動産を売却する手順とは
不動産を使っていなくても、所有者には固定資産税がかかるなど負担があります。相続した不動産を使わない場合には、売却して手放すことも検討しましょう。相続した不動産の売却の手順は、大まかには次のようになります。
手順①:相続する土地を相続登記で名義換えをする
亡くなった人名義のままの不動産を売却することはできません。売却の前提として、法務局で相続登記を行って、相続人名義に変更するする必要があります。遺産分割後に不動産を売却する場合には遺産分割で決まった取得者名義に、遺産分割のために不動産を売却する場合(換価分割の場合)には相続人全員の名義にするのが原則です。
手順②:不動産屋に売却依頼をする
自分で不動産の買主を見つけるのは困難なので、不動産の売却は、宅建業者である不動産会社に依頼するのが通常です。売却はどこの不動産会社に依頼しても同じというわけではありません。不動産を高く売却したいなら、複数の不動産会社に見積もりをしてもらい、査定額を比較して選ぶとよいでしょう。
不動産会社が決まったら、媒介契約を結び、売却を依頼します。媒介契約には、一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類があり、いずれかを選ぶことになります。不動産会社との契約後、売り出し額を決定し、販売活動を開始します。
手順③:買い手がつきやすい土地にする
不動産を売れるようにするためには、価格を適切に設定する必要があります。不動産の価格は常に同じではなく、周辺の取引状況に左右されます。高く売りたいからと言って、相場よりも高い値段を設定すると、なかなか売れないということになってしまいます。
相続した空き家を売却するケースでは、空き家を解体して更地にして売却するか、空き家をリフォームして売却することで買い手が付きやすくなります。なお、空き家を更地にしたりリフォームしたりして売却した場合で特例 の適用要件に該当する場合には、特例により譲渡所得税(後述)が安くなるというメリットもあります。
手順④:不動産の譲渡所得税 を支払う
不動産の売却価格から取得費(購入価格)と譲渡費用(売却の経費)を差し引きしてプラスになれば、譲渡所得税の課税対象になります。譲渡所得税とは、譲渡所得に対してかかる所得税及び住民税のことです。譲渡所得税がかかるケースでは、確定申告を行って納税しなければなりません。
相続した不動産を相続税の申告期限から3年以内に売却した場合には、払った相続税の一部を取得費に加算できる特例があります。また、被相続人と同居していた人が自宅を売却した場合や、相続した空き家を売却した場合、3,000万円特別控除が受けられる特例もあります。
不動産の相続に関するよくある質問
不動産の相続手続きでは、相続登記を行って名義変更をしなければなりません。不動産の相続手続きには手間や費用がかかります。手間や費用をかけてまで相続登記をすべきかどうか悩む方も多いのではないでしょうか?実際に、亡くなった人名義の不動産を、相続登記をしないまま長期間放置しているケースもあると思います。
以下、不動産の相続に関してよくある質問をピックアップしてみましたので参考にしてください。相続登記せずに放置しておくことのデメリットを認識し、不動産の相続があったときにはすぐに手続きをするよう心がけておきましょう。
質問①:亡くなった親名義のままで家に住み続けることは可能ですか?
亡くなった親名義の家に住み続けること自体には、特に問題はありません。しかし、年数が経ってから相続登記をすれば、手続きが複雑になるだけです。いずれ相続登記をしなければならないなら、早めに手続きした方が手間を削減できます。
質問②:父がなくなってから10年以上名義変更を行っていません。問題はありますか?
名義変更には特に期限はなく、長期間名義変更を行っていないからと言って罰則をうけるようなこともありません。ただし、次の相続が発生してからでは手続きが複雑になってしまうので、早めに名義変更をしておくのがおすすめです。
質問③:相続人が兄弟3人います。一つの不動産を3人の共有名義で相続登記することは可能ですか?
不動産を3人の共有名義で登記することも可能です。しかし、共有名義にすると、売却するにも3人の意見が一致しなければならず、不動産を思うように活用できません。3人のうちの誰かが亡くなれば、その人の配偶者や子供などが持分を相続し、より意見の一致が難しくなります。不動産を共有にするのは避けた方が無難です。
質問④:相続した不動産が地方にあります。私は都内に居住しているのですが、相続登記は都内で行うことはできますか?
登記申請は、不動産の所在地を管轄する法務局で行わなければなりません。郵送申請やオンライン申請も可能ですが、自分で手続きするのは手間がかかります。都内の司法書士に依頼して、オンライン申請等をしてもらうのがおすすめです。
質問⑤:相続した不動産を売却しました。税務署から税金の支払い通知書が送付されてくるのでしょうか?
相続した不動産を売却したときには、譲渡所得税がかかります。譲渡所得税は、税務署から届いた支払い通知書により納税するものではありません。年末調整もできないので、自分で確定申告・納税する必要があります。売却の翌年の2月16日から3月15日までの期間に、税務署に確定申告書を提出し、納税も期間内に行わなければなりません。
まとめ
亡くなった人(被相続人)が不動産などの財産を残している場合には、相続人全員で遺産分割協議を行って遺産の分配について話し合う必要があります。遺産の内容が不動産に偏っている場合には、分配方法に悩むことがあるので、代償分割や換価分割も検討しましょう。なお、被相続人が遺言書を残している場合には、遺産分割協議なしで相続手続きができます。
遺産分割が終わったら、法務局で相続登記を申請し、不動産の名義変更手続きを行います。相続登記をするときには、固定資産評価額の0.4%の登録免許税がかかります。司法書士に依頼すれば司法書士の報酬も発生しますが、相続登記にかかる手間を大幅に軽減でき、スムーズに名義変更を終わらせることができます。
遺産のトータルの金額によっては、相続税がかかることがあります。遺産のトータルの金額を計算するためには、不動産も金額に直さなければなりません。不動産の相続税評価額の出し方にはルールがありますが、金額は時価(売却価格)の8割程度になります。被相続人の自宅や事業用店舗については、相続税評価額を8割減額できる小規模宅地等の特例があることも知っておきましょう。遺産分割の仕方を工夫することで、相続税の金額を抑えられる可能性もあります。
遺産分割や相続登記には期限はありませんが、相続税の申告には相続開始から10か月という期限があります。相続税がかかるケースでは、申告期限までに不動産の相続手続きも終わらせた方がよいでしょう。
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この記事を担当した司法書士
司法書士法人クオーレ
代表
鈴田 祐三
- 保有資格
司法書士・行政書士・宅地建物取引士
- 専門分野
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相続・遺言・生前対策・不動産売買
- 経歴
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立命館大卒。平成13年司法書士試験合格。平成19年に鈴田司法書 士事務所を開設。平成27年に司法書士法人クオーレを立ち上げ、 代表を務める。事務所開設以来、多数の相続の相談を受けており累 計相談件数1,400件以上の実績から相談者からの信頼も厚い。