「両親が離婚して以来、何年も会っていない父親(または母親)が亡くなった」
「連絡先も住所も知らないし、再婚しているかどうかも分からない」
このような状況で突然、訃報や債権者からの通知が届くと、どう対応すればよいか分からず不安になるものです。
【結論】親が離婚しても、子供は法定相続人です
どれだけ疎遠であっても、法律上の親子関係が続いている限り、あなたには親の財産(プラスの遺産も借金も)を相続する権利と義務があります。
この記事では、離婚した親の相続が発生した際に直面するリスクや、借金を相続しないための「相続放棄」の手続きについて、名古屋で相続案件を多数扱う司法書士が解説します。
1. 離婚しても親子関係は継続!子供は第一順位の相続人
夫婦が離婚をすると、元配偶者(元妻・元夫)の相続権は失われます。しかし、親子の血縁関係は離婚によって消滅しません。
親権を持っていなかった親であっても、戸籍が別々になっていても、子供は民法第887条により「第一順位の法定相続人」となります。

再婚相手の子供との関係は?
もし、元親が再婚して新しい家族(配偶者や子供)がいた場合でも、前妻(前夫)との間の子供も、再婚相手の子供と等しく相続人となります。
相続分(受け取れる割合)についても、現在の家族の子供と差別されることはありません。
| 相続順位 | 該当する人 |
|---|---|
| 第一順位 | 子供 (離婚した元配偶者との子供を含む) |
| 第ニ順位 | 直系尊属(親・祖父母) |
| 第三順位 | 兄弟姉妹 |
2. 疎遠な親の相続で注意すべき「借金」と「通知」のリスク
疎遠になっていた親が亡くなったことを知るきっかけは様々ですが、中には危険なサインも含まれています。
- 親族や再婚相手からの連絡: 親の新しい家族や、叔父・叔母などから連絡が来るケース。
- 役所や警察からの連絡: 孤独死の場合、身元引受人として警察や自治体から連絡が入ります。
- 債権者からの督促状: 金融機関やカード会社から「相続開始の通知」や督促が届くことで、借金の存在と共に死亡を知るケースです。
⚠ 連絡が来ないまま放置するのは危険
親が再婚しておらず、孤独死などで発見が遅れた場合、死亡の事実を知らないまま時間が経過することがあります。
しかし、「知らなかった」としても、法的な相続人である以上、借金の返済義務などのリスクは発生しています。
もし親の安否が気になる場合、子供であれば戸籍謄本や戸籍の附票を取得して生存確認や住所の調査が可能です。
3. 借金を背負わないための「相続放棄」手続き
相続財産には、預貯金や不動産などの「プラスの財産」だけでなく、借金、未払いの税金、家賃滞納分、連帯保証債務などの「マイナスの財産」も含まれます。
関わりたくない親の借金を背負わないためには、家庭裁判所に「相続放棄」を申し立てる必要があります。
相続放棄が受理されると、その人は法律上「初めから相続人ではなかった」とみなされ、一切の支払い義務がなくなります。
手続きの期限は「知った時」から3ヶ月以内(熟慮期間)
相続放棄には非常に厳しい期限があります。
民法第915条により、相続人は「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3ヶ月以内に手続きをしなければなりません。
- 「知った時」とはいつか?
- 通常は「親が亡くなった日」ですが、疎遠で連絡がなかった場合は「警察や債権者から死亡の通知を受けた日」が起算点として認められるのが一般的です。
- 3ヶ月を過ぎるとどうなる?
- 何もしないまま3ヶ月が経過すると「単純承認」したとみなされ、借金を含むすべての遺産を相続することになります。
4. 借金の有無を調べる「相続財産調査」の重要性
「親に借金があるかどうかわからない」という場合でも、安易に相続を承認するのは危険です。
相続放棄の期限である3ヶ月の間に、できる限りの調査を行う必要があります。
【主な調査方法】
- 預貯金の調査: 通帳の記帳、金融機関への照会
- 不動産の調査: 権利証(登記識別情報)の確認、役所での名寄帳取得
- 借金の調査: 信用情報機関(CIC、JICC、KSC)への情報開示請求
特に消費者金融やクレジットカードの借金は、信用情報機関に開示請求を行うことで判明するケースが多いです。
調査が3ヶ月に間に合わない場合は「期間の伸長」を
財産調査に時間がかかり、3ヶ月以内に相続放棄するかどうかの判断ができない場合は、家庭裁判所に「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申し立てることで、期限を延ばしてもらえる可能性があります。
5. 名古屋で相続放棄の手続きを進める流れ
相続放棄の手続きは、被相続人(亡くなった親)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。
例えば、親が名古屋市内に住んでいた場合は「名古屋家庭裁判所(本庁)」が管轄となります。
本籍地のある役所で以下の書類を取得します。
- 被相続人(親)の住民票除票 または 戸籍の附票
- 被相続人(親)の死亡記載がある戸籍謄本
- 申述人(あなた)の戸籍謄本
「相続放棄申述書」を作成し、管轄の家庭裁判所へ提出します。
【費用の目安】
・収入印紙:800円(申述人1人につき)
・予納郵券(連絡用切手):数百円~(裁判所により異なる)
裁判所から届く質問状(照会書)に回答して返送します。問題がなければ「相続放棄申述受理通知書」が届き、手続き完了です。
離婚した親の相続に関するよくある質問
Q. 生前に「関わりたくない」ので相続放棄できますか?
A. できません。
相続放棄は、親が亡くなって相続が開始した後でなければ手続きできません。親との間で「遺産はいらない」という念書を交わしていたとしても、法的な効力はないため注意が必要です。
Q. 親の遺産を少し使ってしまいました。放棄できますか?
A. 放棄できなくなる可能性が高いです(法定単純承認)。
預貯金の解約、家財道具の処分、形見分けを超える遺産の持ち出しなどを行うと、法律上「相続する意思がある」とみなされ(法定単純承認)、その後で借金が発覚しても放棄できなくなる場合があります。
手をつける前に必ず専門家にご相談ください。
Q. 相続放棄をしても生命保険金は受け取れますか?
A. 受取人が誰になっているかによります。
受取人が「子供(あなた)」に指定されている場合、保険金は受取人固有の財産となるため、相続放棄をしていても受け取ることが可能です。
ただし、受取人が「被相続人(親)」になっている場合や、入院給付金などは遺産に含まれるため、受け取ると相続放棄できなくなります。





























































