不動産の生前贈与のメリット・デメリットと節税対策の進め方 | 相続の窓口|【公式】司法書士法人クオーレ
不動産の生前贈与をするメリット
①相続税を節税や贈与税を抑えられる可能性がある
不動産の生前贈与を行うメリット1つ目は、「相続税を節税できる可能性がある」ということです。
理由は、事前に生前贈与として不動産を贈与することで、相続財産のうち、不動産の評価額分を減らすことができるからです。
そのため、相続税の減額、もしくはそもそも費用が掛からなくなる可能性があります。
しかし、注意しておかなければならないのは、不動産を生前贈与をすると高額な贈与税がかかってしまうことです。そのため「減税の制度」や「贈与税の控除」を利用できるかどうかを確認することが重要になります。
贈与税は、相続税に比べて基礎控除額もかなり小さく、税率の累進度合いも高くなっていますので、しっかりとポイントを抑えて手続きを進めることで、相続税の減額や贈与税自体も抑えられることは可能です。
②自分で相続する相手を選択し、トラブル回避ができる
メリット2つ目は、「自分が相続したい相手に確実に不動産を渡すことができる」という点です。
生前贈与の大きなメリットとして、「生きているうちに相手に贈与できる」という点があります。そのため、ご自身で贈与したい方を決定でき、納得のいくかたちで贈与を行えます。また不動産の場合は、誰に贈与するのかが決まり次第、名義変更が可能です。
もし生前贈与や遺言を残していなかった場合、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があり、トラブルにもなりかねません。また、ご自身が亡くなった後の手続きなので、誰が不動産を取得することになるかも決まらないままです。
そういった相続人間のトラブルを防ぐためにも、事前に贈与をしておくことが重要であるといえるでしょう。
③比較的短期間で不動産の贈与ができる
3つ目のメリットは、「不動産の贈与は比較的短期間で完了できる」ことです。
贈与者と受贈者が不動産の贈与契約を締結して、すぐに法務局で名義変更を行えば、およそ1ヶ月以内に手続きを終えることが可能です。
一方、生前対策をしなかった場合は、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があり、名義変更を行うには戸籍謄本など必要な書類や準備物が多くなります。誰に渡すのかを決め、手続きも複雑になることを考えると、手続きが終わるまでの期間は明らかに長期化するでしょう。
以上のように相続手続きと生前贈与の期間を比較すると、生前贈与は短期間のうちに不動産を引き継ぐことができるため、相続人への負担軽減にも繋がるといえます。
ー実際に節税できた事例
・夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除(国税庁)
→婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できるという特例
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4452.htm
・直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税(国税庁)
→令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得または増改築等(以下「新築等」といいます。)の対価に充てるための金銭(以下「住宅取得等資金」といいます。)を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となる(以下「非課税の特例」といいます。)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4508.htm
不動産の生前贈与のデメリット
①贈与税、その他の税金がかかる
1つ目は、贈与税やその他の税金がかかる点が挙げられます。
不動産を生前贈与すると、「贈与税」が課税されます。贈与税の控除制度を利用できない場合は高額な贈与税が課税されることになったり、贈与税の節税になっても以下の税金がかかります。
- 不動産を取得したことにかかる不動産取得税
不動産取得税 = 不動産の価格(課税標準額) × 税率 – 特例 - 名義変更の手続きをするときにかかる登録免許税
登録免許税 = 固定資産税評価額 × 0.4%
これらの税金も、不動産の価値次第では数十万円から数百万円単位の金額になることがあるため、不動産の生前贈与を行う場合は、司法書士など専門家の力を借りて、節税効果が見合っているかを判断してもらう必要があるでしょう。
自身の判断で手続きを行ったものの、「結果的に無駄になってしまった」とならないためにも、きちんと確認をしてから進めるのが一番確実です。
②名義変更や税申告の手続が煩雑
デメリットの2つ目は、各種手続が煩雑であるということです。
生前贈与をした際によくあるのが、自分で手続を進めようとしてみたものの、何度も修正が入るうちに嫌になってしまったり、面倒になったというケースです。
では実際に不動産の生前贈与には、どのような手続が必要になるのか、それは以下の2つです。
- 法務局での不動産の名義変更手続き
- 税務署での贈与税に関する申告手続き
一見、少ないから自分ですぐできるのでは?とお考えの方も多いかと思いますが、上記の手続きは単なる書類の作成だけでなく、添付資料の収集など細かい作業が必要になります。
また、細かいチェックが行われるため、完璧な書類が作成されていないと、何度も修正や再提出が求められるため、スムーズに進めるためには司法書士に依頼するのが得策であると言えるでしょう。
生前贈与をスムーズに進めるためのポイント2つ
①計画的な手続を
ここまで、メリットとデメリットをお伝えしましたが、全てにおいて共通しているのは、生前贈与を行うにも「ある程度の期間確保と手続きの段階を踏むことが必要である」という点です。何かあってからでは、時間や行動に制限がかかってしまう可能性もあるため、早めに計画を立て、行動することが重要です。
②司法書士の力を借りる
計画を立て、動き始めたら、専門家の力を借りましょう。今、不動産の生前贈与を考えている方の中には、もしかしたら贈与をしない方が良い方もいらっしゃるかもしれません。やみくもに自身で判断し、手続を行ってからでは、時間も労力もかかってしまいます。
スムーズに進めるためにも、現状の把握とその後の手続において、何が一番良いのかを知るためにも、一度司法書士へ相談してみてはいかがでしょうか。
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この記事を担当した司法書士
司法書士法人クオーレ
代表
鈴田 祐三
- 保有資格
司法書士・行政書士・宅地建物取引士
- 専門分野
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相続・遺言・生前対策・不動産売買
- 経歴
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立命館大卒。平成13年司法書士試験合格。平成19年に鈴田司法書 士事務所を開設。平成27年に司法書士法人クオーレを立ち上げ、 代表を務める。事務所開設以来、多数の相続の相談を受けており累 計相談件数1,400件以上の実績から相談者からの信頼も厚い。