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【相続登記・相続手続き】先々代名義の利用価値がない雑種地—相続人が膨大で遺産分割は現実的に困難なため、「相続人申告登記」で相続登記義務だけを履行した事例(名古屋市)

公開日:2026/02/27
最終更新日:2026/03/11

状況

名古屋市港区にお住まいのP様(50代・男性)から、「相続登記の義務化が始まったと聞き、不動産の名義が先々代のまま残っているのが心配になった。ただ、対象の土地は山間部に近い“利用価値のない雑種地”で、固定資産税もわずか。売却も活用も現実的でない。一方で相続人が非常に多く、相続人の確定や遺産分割協議をまとめるのはほぼ不可能に近い」とご相談をいただきました。

登記簿を確認すると、所有者はP様の先々代(祖父母世代より前)名義のまま長年放置されており、代替わりのたびに相続が未了の状態で連鎖していました。相続関係をたどれば、分岐した家系が複数に広がり、相続人の数は数十名規模になる可能性が高い状況でした。現住所が分からない方や疎遠な親族が含まれることも想定され、「相続人全員の合意を取って遺産分割協議書を作る」という通常の相続登記は、時間・費用・労力の面から現実的ではありませんでした。

しかし、2024年4月から相続登記申請が義務化され、「相続により不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記申請が必要」「正当な理由なく怠ると過料の可能性がある」と知り、P様は「活用する予定もない土地のために、将来ペナルティだけ背負うのは避けたい」と強い不安を抱えて来所されました。

そこで弊所では、“最終的な名義整理(遺産分割)”と“義務化への当面の対応”を切り分ける方針をご提案しました。

司法書士の提案&お手伝い

結論として本件では、売却・担保設定・活用を予定していないこと、そして相続人が膨大で遺産分割協議が現実的に困難なことから、相続登記(名義変更)そのものを目指すのではなく、相続登記義務を免れるための手段として「相続人申告登記(相続人申告制度)」を活用する方針を採りました。

相続人申告登記は、相続人が法務局に対し「自分が登記簿上の所有者の相続人である」などを申し出ることで、登記官が申出人の氏名・住所等を登記記録に職権で記録する仕組みです。
遺産分割協議がまとまらない場合でも、相続人が単独で申し出でき、他の相続人の同意や署名押印を集める必要がない点が大きな特徴です。
また、制度の利用は「相続登記のペナルティを免れるため」に想定されており、登録免許税がかかりません。

一方で、相続人申告登記は“名義が移る”わけではなく、権利関係を確定させる登記ではありません。したがって、不動産を売却したり、抵当権を設定したりする場合は、別途、正式な相続登記が必要です。また、将来、遺産分割協議が成立し、所有権を取得した場合は、遺産の分割の日から3年以内に所有権の移転登記を申請する必要があります。

この点はとても重要なので、P様には「今回は“相続登記義務化によるペナルティを避けるためだけ”に使う」「将来もし活用方針が変わったら、その時点で正式な相続登記の可否を再検討する」という整理をじっくりご説明したうえで進めました。

具体的な進め方

1)対象不動産の特定

登記事項証明書で雑種地の地番・所在を確定し、申出対象を明確にしました。

2)最低限の相続関係の証明資料を整理

相続人申告登記でも、申出人が相続人であることを戸籍等で示す必要があるため、無制限に戸籍を追いかけるのではなく、今回の目的(申出が通ること)に必要な範囲を見極めて収集方針を立てました。制度上、通常の相続登記のように“全相続人を確定して遺産分割協議書を作る”ことまでは求められない運用が想定されています。

3)申出書の作成・提出

P様の申出として、法務局に相続人申告登記の申出書を提出し、登記官の職権記録につなげました。

結果

本件では、相続人が膨大で遺産分割協議をまとめることが実質不可能、かつ土地の利用価値も低く「名義を整えて売る/担保にする」といった予定がないという事情が明確でした。そこで、相続人申告登記を活用し、P様は過料リスクへの不安から解放されました。

また、相続人申告登記は相続人ごとに単独で申し出られる制度であるため、他の親族に連絡して協力を求めたり、所在不明者を追跡したりする必要がありません。現実的な負担で「ペナルティ回避」だけを完了できた点が大きな成果でした。

※補足として、P様には「本制度は“最終的な名義整理の代わり”ではない」「将来もし売却等を考えるなら正式な相続登記が必要」という注意点も、書面と口頭で明確にお伝えしています。

先々代・先代名義のまま残る、利用価値の低い山林・原野・雑種地などは、相続人が膨大になり「相続登記を完成させる」こと自体が現実的でないケースがあります。一方で、相続登記の義務化により、放置のままだと不安が残るのも事実です。

価値の低い土地が先々代名義のまま残っている

相続人が多すぎて遺産分割協議がまとまらない

売る予定はないが、義務化(期限・過料)が不安

という方は、正式な相続登記を目指すべきケースと、相続人申告登記で当面の義務対応をするケースを切り分けることで、現実的な解決ができる場合があります。
状況整理から弊所でサポートしますので、お気軽にご相談ください。

※記事内容を一部修正して掲載しております。
※当サイトの内容、テキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
また、まとめサイト等への無断引用を厳禁いたします。

この記事を担当した司法書士

司法書士法人クオーレ

代表

鈴田 祐三

保有資格

司法書士・行政書士・宅地建物取引士

専門分野

相続・遺言・生前対策・不動産売買

経歴

立命館大卒。平成13年司法書士試験合格。平成19年に鈴田司法書 士事務所を開設。平成27年に司法書士法人クオーレを立ち上げ、 代表を務める。事務所開設以来、多数の相続の相談を受けており累 計相談件数1,400件以上の実績から相談者からの信頼も厚い。


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