【生前贈与・相続税】相続時精算課税を使った生前贈与で“認知症前の資産移転”を実現—将来の自宅建築と住宅ローンの抵当権設定リスクも見据え、提携税理士と試算して最適解に着地した事例(名古屋市)
- 公開日:2026/02/27
- 最終更新日:2026/02/27
状況
春日井市にお住まいのM様(40代・長女)から、「父(70代)の財産について、将来の認知症リスクに備えて早めに整理したい。相続時精算課税制度を使った贈与が良いと聞いたが、税金面で損しないか不安」とご相談をいただきました。
ご家族の状況として大きかったのは、近い将来、M様が父名義の敷地の上に自宅を建築したい”という計画があることでした。建築にあたり住宅ローンを利用する予定で、ハウスメーカーの担当者からは「土地を担保に抵当権を設定できること」が必ず必要になると説明を受けていました。土地が父名義のままだと、ローンの担保設定(抵当権設定登記)には父の協力が必要になります。ここで、もしお父様が認知症を発症して判断能力が低下してしまうと、抵当権設定などの法律行為ができなくなり、家を建てたいタイミングでローンが組めないというリスクが現実味を帯びていました。
一方で、ご両親は生活資金の預金も保有しており、生活費や医療費、将来の介護費用も確保しておく必要があります。「土地だけ早めに動かしたいが、親の生活資金を削るようなことはしたくない」「贈与のやり方を間違えて税金が増えるのも避けたい」という、複数の条件が同時にある案件でした。
また、相続時精算課税を選ぶ場合は、初年度に「相続時精算課税選択届出書」の提出が必要で、贈与税の申告期限(原則として贈与を受けた翌年2月1日~3月15日)も絡みます。制度の選択だけでなく、期限を落とさずに手続きとして成立させる段取りも不安要素でした。
司法書士の提案&お手伝い(提携税理士と連携)
弊所では、本件のゴールを次の4点に整理しました。
- 近い将来の自宅建築に向け、土地の担保設定(抵当権設定)ができなくなる可能性をなくす状態を作る
- 親の生活資金を確保しつつ、資産移転を進める
- 相続税・贈与税を含めた総合的な負担を“数字で”確認した上で判断する
- 申告期限・登記期限を落とさず、実務を確実に完了させる
その上で、相続時精算課税制度を軸にした贈与手続きを、提携税理士と一体で設計しました。相続時精算課税は“贈与したら終わり”ではなく、相続時に精算(合算)される制度なので、税務の試算なしに進めると後悔につながりやすいためです。
1)制度の説明は「メリット・デメリット」から逆算して整理
相続時精算課税は、一定の要件のもとで贈与時の負担を抑えつつ、贈与した財産を相続時に合算して精算する仕組みです。2024年改正以降は、相続時精算課税にも年間110万円の基礎控除枠が設けられ、計画的な移転がしやすくなりました。
一方で、制度を一度選択すると暦年課税へ戻れない(※同一の贈与者からの贈与について)など、取り返しのつかない性質があるため、最初の判断が重要です。
本件では「土地を早めに動かしたい」理由が明確でした。認知症発症後は、土地の名義移転も抵当権設定も原則として困難となり、住宅ローンの実行に直結するからです。そこで、土地の扱いを中心に、制度の向き不向きを整理しました。
2)提携税理士が、相続まで含めた税額シミュレーションを実施
税理士が次の観点で複数パターンの試算を行いました。
- 何もしない場合の相続税見込み
- 相続時精算課税で土地を贈与した場合の相続税見込み(贈与財産の相続時合算を反映)
- 土地以外(現金・有価証券など)を贈与する場合の比較
- 将来、建築・売却が絡む場合の資金繰りへの影響(親の生活資金の確保を前提)
ここで大事だったのは、“贈与時点の税負担”だけでなく、“相続時点まで通しで見た総負担”を確認したことです。相続時精算課税は、贈与時に負担が軽く見えても、相続時の合算で結果が変わり得ます。また、不動産が絡むと相続税の特例との相性や評価の扱いも影響するため、税理士試算が必須でした。
3)司法書士が贈与手続き(契約・登記)を「住宅ローンまで見据えた形」に整備
税務の方向性が固まった後は、弊所が贈与の実務を組み立てました。具体的には、
- 贈与契約書の作成(将来の説明責任にも耐える内容)
- 不動産の所有権移転登記(贈与による名義変更)
を一括で整えました。
ここでのポイントは、単に名義を移すのではなく、建築計画のタイミングで金融機関の審査・抵当権設定がスムーズにできる状態にしておくことです。名義が父のままでは、認知症リスクがそのままローンの審査が通らないリスクになります。贈与により名義を移しておくことで、将来の担保設定はM様の意思決定のみでできるようになり、計画が順調に進みます。
4)申告期限(翌年2/1~3/15)を逆算し、税理士と二人三脚で期限管理
相続時精算課税を使う場合、初年度の届出・申告期限が肝です。弊所では登記や契約書の整備スケジュールを税理士と共有し、必要資料(登記簿・評価資料・贈与契約書等)を速やかに税理士へ連携。申告が遅れて制度が使えない、といった事故を避けるよう、工程を逆算して進行管理しました。
結果(メリット・デメリットを踏まえた着地)
最終的に本件では、提携税理士の試算により「どの財産を、どの範囲で相続時精算課税に乗せると合理的か」を見極めたうえで、贈与手続きを実行できました。
メリットとして大きかった点は次のとおりです。
- 将来の自宅建築に向け、土地の名義を整理できたことで、認知症発症後に抵当権設定ができず住宅ローンが止まるリスクを大きく低減できた
- 税理士試算により、贈与時点だけでなく相続まで含めた“総負担”で判断でき、納得感のある意思決定ができた
- 司法書士(契約・登記)と税理士(申告・試算)が最初から連携し、期限管理まで一本化できたため、手続きが迷走しなかった
デメリットとして事前に整理した点も明確です。
- 相続時に贈与財産が合算され、相続税計算に影響する(=贈与で完結しない)
- 一度選択すると暦年課税へ戻れないなど、制度の“後戻りできなさ”があるため、初期判断が重要
- 不動産を贈与する場合は、将来の税制適用との相性や評価の論点があるため、必ず税理士試算が前提になる
- 申告期限(原則2/1~3/15)を落とすと制度適用ができないため、段取りが生命線
結果として、ご家族からは「家を建てる計画がある中で、認知症リスクが現実的だったので、早めに動けて安心した」「税金面の良い話だけでなく、合算や制度の縛りも理解した上で決められた」「司法書士と税理士が連携していたので進め方が明確だった」とのお声をいただきました。
相続時精算課税制度は、2024年改正で使いやすくなった一方、選び方を誤ると相続時に不利になることもある制度です。特に、親名義の土地に家を建てたい/住宅ローンを使いたいご家庭は、認知症リスクが「担保設定ができない」という形で顕在化しやすく、早めの設計が重要になります。
✔将来、親名義の土地に自宅を建てたい(住宅ローン予定)
✔認知症になると抵当権設定ができないと聞いて不安
✔相続時精算課税を使うべきか迷っている
✔贈与の登記と税務申告をまとめて進めたい
名古屋市周辺でという方は、現状整理からご相談ください。
弊所では提携税理士と連携し、試算→設計→贈与手続き(契約・登記)→申告まで一貫してサポートいたします。
また、まとめサイト等への無断引用を厳禁いたします。
この記事を担当した司法書士

司法書士法人クオーレ
代表
鈴田 祐三
- 保有資格
司法書士・行政書士・宅地建物取引士
- 専門分野
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相続・遺言・生前対策・不動産売買
- 経歴
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立命館大卒。平成13年司法書士試験合格。平成19年に鈴田司法書 士事務所を開設。平成27年に司法書士法人クオーレを立ち上げ、 代表を務める。事務所開設以来、多数の相続の相談を受けており累 計相談件数1,400件以上の実績から相談者からの信頼も厚い。






















































