数次相続の発生により、中間省略登記を行ったケース
経緯・状況
相談者様のお父様が10年前に、お母様が3年前にお亡くなりになられ、お二人名義の不動産について、まだ手続きをしていないので相続手続を依頼したいということでお越しいただきました。
数次相続
数次相続とは、ある方がお亡くなりになり、遺産相続が開始した後、「遺産分割協議」や「相続登記」を行わないうちに相続人の一人が亡くなり、次の相続が発生することを言います。
今回の事例でいうと、まず10年前にお父様がお亡くなりになったので、その時点の相続人はお母様、長男、長女の三人です。次いでお母様がお亡くなりになったので、最終的な相続人は二人になりました。
司法書士による解説
忠実の原則
不動産登記の原則は、どのように権利が変動したかを忠実に表さないといけません。
ここで問題になるのは、お父様の不動産の持分をどうやって最終的な相続人であるお子様二人に変えるかということです。
つまり、お父様が亡くなり、次いでお母様が亡くなり、最終的な相続人がお子様二人である場合、お父様が亡くなった時点での相続人は、お母様とお子様二人です。
そこでまず、お父様の不動産の持分について、法定相続分通りにお母様とお子様に名義変更をするか、お母様とお子様二人が遺産分割協議の上、遺産分割協議書を作成しどなたかに名義変更をしてから、お母様の不動産の手続きをするという手順を踏まなくてはならないのです。
忠実の原則の例外(中間省略登記)
しかし、お母様がすでにお亡くなりになっている場合、お父様の遺産分割について、お母様が参加することはもはや不可能です。そして、法定相続分でお母様、お子様二人に名義を変えることもできますが、
最終的にお子様一人が受け継ぎたい場合は、もう一人のお子様から別のお子様へ登記をする必要がある等非常に煩雑で、登録免許税(登記をおこなう際に支払うお金)も余分にかかってしまいます。
そこで、今回のように、一回目の相続(お父様が亡くなる)、二回目の相続(お母様が亡くなる)、最終的な相続人が2人以上いる場合のようなケースでは、一回目の相続について、お母様が本来協議に参加すべきであった地位をお子様二人が受け継ぎ、お母様の代わりに遺産分割協議を行います。 結果として、お父様→お母様、お子様→お子様というように2回に分けて登記すべきところを、お父様→お子様というように、1回で登記をおこなうことができるのです。これを中間省略登記といいます。ただし中間省略登記は限られた場合にしか認められていませんので注意が必要です。
相続登記の義務化
現在、相続登記を行うことは義務ではありませんが、相続登記は、2024年4月1日から義務化されます。
不動産の所有者がなくなり、相続があったときは、相続により不動産の所有権を取得した相続人は「相続の開始及び所有権を取得したことを知った日から3年以内」に不動産の名義変更登記をしなければなりません。
そして、不動産取得を知った日から3年以内に正当な理由なく登記・名義変更手続きをしないと10万円以下の過料の対象となります。
特に、相続が発生してからかなり時間が経ってから手続きを行おうとすると、今回のケースのように数次相続や代襲相続が発生し、権利関係や手続きが複雑になります。
複雑になればなるほど、専門家の費用も高額になる傾向にあるので、相続登記がお済でない方はなるべく早く手続きされることをお勧めします。
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この記事を担当した司法書士
司法書士法人クオーレ
代表
鈴田 祐三
- 保有資格
司法書士・行政書士・宅地建物取引士
- 専門分野
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相続・遺言・生前対策・不動産売買
- 経歴
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立命館大卒。平成13年司法書士試験合格。平成19年に鈴田司法書 士事務所を開設。平成27年に司法書士法人クオーレを立ち上げ、 代表を務める。事務所開設以来、多数の相続の相談を受けており累 計相談件数1,400件以上の実績から相談者からの信頼も厚い。