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【民事信託】賃貸不動産オーナーの認知症対策—家族信託で「家賃収入管理・生活費支払い・退去後の売却判断」まで一本化した事例(名古屋市)

公開日:2026/02/27
最終更新日:2026/02/27

状況

名古屋市中区にお住まいのL様(60代・長男)から、「両親が高齢になり、将来の認知症が心配。賃貸している不動産があり、家賃の管理や税金・修繕費の支払いが大変になってきた。賃借人が退去したら売却も検討しているが、両親の判断能力が落ちたら売れなくなるのではないか」とご相談をいただきました。

ご両親はともに80代で、日常生活は自立しているものの、通院や手続きに時間がかかるようになり、銀行での入出金や公共料金・保険料・固定資産税などの支払いを「毎回つらい」と感じる場面が増えていました。特に、賃貸不動産に関しては、家賃の入金確認、管理会社との連絡、修繕の判断、火災保険の更新、確定申告の資料整理など、細かな事務が継続的に発生します。

さらに、賃借人が退去した場合に「空室のまま維持するのか」「リフォームして再賃貸するのか」「売却するのか」といった重要な意思決定が必要になる点です。高齢になるほど判断に疲れが出やすく、もし認知症が進行してしまうと、不動産の売却や賃貸条件の変更などが困難となる可能性があります。

L様としては、ご家族が将来的にも安心した生活が送れるようにしたおきたいが、認知症が進行した際、成年後見制度を利用すると不動産売却のハードルが高いと聞いたこともあり、より柔軟な方法がないかを探して弊所へご相談に来られました。

司法書士の提案&お手伝い

弊所では、相談内容を整理したうえで、今回の課題は大きく3つに分けられると考えました。

  • 賃貸不動産の管理・収益管理(家賃、修繕、退去対応)
  • ご両親の生活資金の管理(預金の入出金、諸費用の支払い)
  • 将来の売却判断(退去後の売却・再賃貸の意思決定)

そして、これらを「認知症になっても止まらない仕組み」にするため、家族信託(民事信託)の組成をご提案しました。家族信託は、今ある資産を信託財産として管理・処分できる権限を受託者に託すことで、認知症になっても、受託者が法的手続きを実行できる点が特徴です。

1)信託の目的を明確化

最初に、信託の目的を文章で明確にしました。今回は、「ご両親の生活と福祉を守ること」「賃貸不動産の管理運用を継続し、必要な支払いを滞りなく行うこと」「賃借人退去等のタイミングで、売却・再賃貸を柔軟に判断できる体制を作ること」を柱として整理。

目的が曖昧だと、信託を作っても運用がぶれたり、家族内で「何のための信託だったか」が分からなくなったりするため、ここを丁寧に詰めました。

2)関係者の設計と、権限の線引き

本件では、ご両親を委託者(信託を設定する人)とし、受託者(管理を担う人)をL様に設定。受益者(利益を受ける人)は基本的にご両親とし、家賃収入や売却代金が「生活資金としてご両親のために使われる」設計にしました。

あわせて、万一L様が受託者を続けられなくなった場合に備え、後継受託者も定め、運用が途中で止まらないようにしました。

3)保有不動産の管理、処分権限を具体化

修繕の発注や費用支払いの権限、賃貸借契約の解除・締結の権限、不動産の売却やそれに伴う手続きの権限など、実務で必要になる権限を契約書に具体的に落とし込みました。

4)生活資金の管理を信託口座で一本化

ご両親が困っていたのは、銀行の入出金や諸費用支払いの負担です。

そこで、信託専用口座にて、「家賃収入を信託財産として管理」「固定資産税・保険料・管理費・修繕費の支払い」「ご両親の生活費・介護費等の支払い」が滞りなく回るよう、信託する金額を決め、運用ルールを整備しました。

5)名義・登記手続きと一括支援

家族信託を実効性あるものにするため、信託契約書の作成、公証役場での手続き、対象不動産の信託登記(名義を受託者名義に移し、信託であることを登記簿に反映)、信託口座の開設まで、弊所で一括して支援しました。

結果

家族信託の組成により、将来ご両親の判断能力が低下した場合でも、賃貸不動産の管理・家賃収入の受け取り・税金や修繕費の支払いなどが止まらない体制が整いました。ご両親が負担に感じていた預金の入出金や諸費用支払いも、受託者であるL様がルールに沿って担えるようになり、日々のストレスが大きく軽減されました。

また、賃借人が退去した際に「売却するか、再賃貸するか」を柔軟に判断できるよう、処分権限を明確にしたことにより、将来の選択肢が確保されました。結果として、ご家族は「認知症になったら不動産が動かせないのでは」という不安から解放され、ご両親も「自分たちの生活のために使ってもらえるなら安心」と前向きに受け止められました。

本件は、賃貸不動産という“動かす必要がある資産”と、生活費という“毎月動くお金”を同時に扱うため、家族信託の効果が分かりやすく表れた事例です。信託の目的と運用ルールを具体化したことで、単なる書面づくりではなく、実際に回る仕組みとして機能する形に整えられました。

高齢の親御様が賃貸不動産を所有している場合、認知症対策は「いつか」ではなく、元気なうちに動いた方が選択肢が広がります。特に、賃借人の退去や修繕、売却判断など、将来“意思決定が必要になる局面”が見えている場合は、家族信託が有力な選択肢になることがあります。

親が賃貸不動産を持っていて管理が大変

家賃管理や支払いの負担を減らしたい

将来、退去後に売却できる状態を作っておきたい

成年後見だと不動産売却が心配

という方は、現状整理からご相談ください。
ご家庭の事情に合わせて、家族信託の設計・契約書作成・信託登記・運用開始まで一体でサポートいたします。

※記事内容を一部修正して掲載しております。
※当サイトの内容、テキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
また、まとめサイト等への無断引用を厳禁いたします。

この記事を担当した司法書士

司法書士法人クオーレ

代表

鈴田 祐三

保有資格

司法書士・行政書士・宅地建物取引士

専門分野

相続・遺言・生前対策・不動産売買

経歴

立命館大卒。平成13年司法書士試験合格。平成19年に鈴田司法書 士事務所を開設。平成27年に司法書士法人クオーレを立ち上げ、 代表を務める。事務所開設以来、多数の相続の相談を受けており累 計相談件数1,400件以上の実績から相談者からの信頼も厚い。


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