相続人が外国籍である不動産の相続登記をしたケース
ご相談内容
ご相談者様
今回のご相談者は、60代女性。長年一人暮らしをしていた実母が亡くなり、実家の名義変更を検討する中で、相続人の一人である弟様が現在ブラジルに在住しており、しかもブラジル国籍であることが相続手続きにどのような影響を及ぼすのか不安を感じて、当事務所に相談にいらっしゃいました。
相続のご相談内容
お母さまの相続手続きにあたり、相続人はご相談者様自身とブラジルに住む弟様の二人であり、被相続人であるお母様名義の不動産を相談者様名義にしたいとのご希望でしたが、弟様はすでに日本を離れて30年以上が経過しており、日本語での書類作成も困難な状態でした。また、印鑑証明書や戸籍など、日本国内で通常必要とされる書類を海外在住で外国籍の場合何を揃えればよいかも分からず、不安を抱えていらっしゃいました。
ご相談の背景
被相続人が亡くなってからすでに半年が経過しており、相続登記の期限は被相続人が亡くなってから3年という期限があるため、相続人間の認識としては「できるだけ早めに名義を変更しておきたい」という希望がありました。特に、今後実家の売却も検討しているとのことで、名義が亡き母のままでは売却活動にも支障が出ると危惧されていました。加えて、弟様は健康面に不安もあり、スムーズに手続きが進まないと相続自体が頓挫する可能性もありました。
司法書士からのご提案&お手伝い
相続人の一人が外国籍かつ海外居住である場合、日本国内の一般的な相続登記とは異なる準備が必要です。そこで、相続の窓口では以下のように対応しました。
1.日本国内にいるご相談者様との間で、遺産分割協議書の素案を作成しました。
2.海外在住の弟様には、現地公館にて署名を行い、公証を受けたうえで書類を返送してもらう手配を案内しました。
3.現地での公証を取得してもらい、日本の登記に対応できるよう日本語に翻訳しました。
4.必要書類として、お母さまの出生から死亡までの戸籍(除籍)謄本を取得し、弟様の出生証明書を取り寄せるなど、相続人としての資格を法的に確認しました。
ポルトガル語で作成されていた書類に関しては日本語に翻訳いたしました。
5.日本語が不自由な弟に対しては、ご相談者様のご協力も得て説明していただき、ポルトガル語訳の書類をそろえて対応しました。
6.一般的な相続登記とは異なるため、必要書類について法務局とも協議しました。
結果
今回の手続きにより、不動産の相続登記は無事に完了し、名義は相談者様へと変更されました。
これにより、実家の売却に向けた不動産業者との打合せもスムーズに進行。また、弟様の同意も明確に書面化されたことで、今後のトラブル回避にもつながりました。
海外在住者が関与する相続でも、手順さえ踏めば確実に進められるという事例となりました。
相続手続きをご依頼いただくメリット
1.相続登記の完了により、不動産の売却・活用が可能となった。
2.海外在住の相続人でも、現地の公証を得ることで円滑に手続きを行えた。
3.手続きを専門家が代行することで、相談者の精神的・時間的負担が軽減。
相続手続きの流れ
1.相続人の確定のため戸籍謄本(除籍謄本)等公的な書類の収集
2.相続関係説明図の作成
3.遺産分割協議書の作成、翻訳
4.海外在住者の署名・公証取得、翻訳
5.必要書類一式を揃えて法務局にて相続登記申請
6.登記完了後、不動産名義が相談者に変更される
まとめ
事例の要約
この事例では、海外在住かつ外国籍の相続人が関与する不動産の相続登記という、やや複雑な状況にもかかわらず、丁寧な準備と専門家の支援により、相続登記を無事に完了させることができました。
相続人間での連携や、外国の公証制度の活用が鍵となりました。
司法書士からのメッセージ
相続人が海外に住んでいる、あるいは外国籍であるという状況でも、適切な手順を踏めば相続手続きを進めることは十分可能です。
一見複雑に見える相続も、経験のある専門家がサポートすることで、スムーズに解決できます。相続でお悩みの方は、早めのご相談をおすすめします。
もし、同じような状況でお困りの方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度ご相談ください。
また、まとめサイト等への無断引用を厳禁いたします。
この記事を担当した司法書士

司法書士法人クオーレ
代表
鈴田 祐三
- 保有資格
司法書士・行政書士・宅地建物取引士
- 専門分野
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相続・遺言・生前対策・不動産売買
- 経歴
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立命館大卒。平成13年司法書士試験合格。平成19年に鈴田司法書 士事務所を開設。平成27年に司法書士法人クオーレを立ち上げ、 代表を務める。事務所開設以来、多数の相続の相談を受けており累 計相談件数1,400件以上の実績から相談者からの信頼も厚い。