相続した空き家の特例控除を利用して売却したケース
状況①~相続登記~
従前被相続人がお住まいだった土地建物をご売却するために相続登記が必要となるため、その登記手続きのご依頼でご来所いただきました。
相続人は3名で、話し合いもすでになされており、名義人となる相続人が売却の契約もされておりました。
そのような状況でのご来所でしたので、お手続きはスムーズに進むと思われました。
状況②~相続税~
ところが、ご売却された後の譲渡所得税のことは想定されていなかったようで、税金のことも考慮してお話し合いはされたか確認をしたところ、そこは念頭になかったとのことでした。
そこで売買契約書を拝見し、被相続人の居住用不動産(空き家)を売った時の特例の要件を満たすか確認をすることにしました。
司法書士の提案&お手伝い
売買契約書の目的物は「土地」と「建物」となっていました。
そして、特約の欄に建物は現状のまま引渡し、買主の責任で取り壊すと規定されていました。
上記の特例を受けるためには要件があり、契約書通りの売買では「譲渡の時において一定の耐震基準の要件を満たすものであること」という要件に該当する必要があります。
ただ特例の適用を受ける家屋は「昭和56年5月31日以前に建築され」ているものであるため、耐震基準の要件をみたすケースはほぼありません。
今回のケースでも耐震基準を満たすものではなかったため、特例の適用を受けることはできないように見えます。
しかし、特例の適用を受けることができる売買には、相続により取得した被相続人居住用家屋の全部の取壊し等をした後に被相続人居住用家屋の敷地等を売った場合も含まれます。
今回のケースでいうと建物を取り壊した後に売ったのであれば特例の要件を満たしているように見えます。
相続した不動産をすぐに売却したいということで契約を締結されたわけですが、建物を解体して売るだけで特例の適用を受けることができ、譲渡所得の金額から最高3000万円まで控除することが可能となるように思われました。
そこで税の専門家である税理士をご紹介し特例の適用を受けた場合と受けなかった場合のシュミレーションを行いました。
結果
その結果特例の適用を受けるように家屋を解体したうえで売却したほうがよいとの判断となりました。
そこで、不動産仲介業者と買主に事情を説明して売買契約をやり直すことになりました。
遺産分割協議書の内容は当初ご相談にお越しいただいたものと変わってはおりませんが、最終的な結果は大きく変わったと言えるでしょう。
このように遺産分割協議から派生するもの、考慮しておかなければならないことがあったりします。
単純に見えるものでも大きな損失にならないよう一度ご相談ください。
また、まとめサイト等への無断引用を厳禁いたします。
この記事を担当した司法書士
司法書士法人クオーレ
代表
鈴田 祐三
- 保有資格
司法書士・行政書士・宅地建物取引士
- 専門分野
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相続・遺言・生前対策・不動産売買
- 経歴
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立命館大卒。平成13年司法書士試験合格。平成19年に鈴田司法書 士事務所を開設。平成27年に司法書士法人クオーレを立ち上げ、 代表を務める。事務所開設以来、多数の相続の相談を受けており累 計相談件数1,400件以上の実績から相談者からの信頼も厚い。