父親の相続登記をしないままに、子の一人に相続が発生したケース(数次相続・死者名義の相続登記)
状況
空き家になっていた不動産を売却しようとしたところ、5年前に他界されたお父様名義になっていました。
不動産屋さんから相続登記が必要と言われたので、ご相談にお見えになりました。
今回のケースでは、相続登記が未了の間に、共同相続人であるご相談者様のお姉様にも相続が発生しており、最終的には、自身と甥っこで半々に分けたいとのご意向でした。
当事務所の提案と解決
今回のように、父親が亡くなった後に、子の一人が亡くなったようなケースを数次相続といいます。
数回続けて、相続が発生した場合には、相続が発生した都度、それぞれの相続登記を行うことが原則となります。
したがって、今回のケースでも、まずはお父様の相続について、相続登記が必要となり、ご相談者様とお姉様の共有名義(1/2ずつ)で名義変更を行います。
(死者名義の相続登記手続きも認められています。)
続いて、お姉様が相続した共有持分を甥っ子様へ名義変更を行います。
つまり、2回の相続登記をしてはじめて、ご相談者様と甥っ子様の名義に変更することが可能となります。
ポイント
ただし、下記の要件を満たす場合には、例外的に中間の相続登記を省略して、1回の相続登記で名義変更することが可能となります。
1.中間の相続人が一人の場合
例えば、祖父が亡くなり(祖母は先に他界)、手続きをしない間に一人っ子だった父も亡くなったような事案での場合。
本来であれば、祖父から父への名義変更を済ませ、父から子へ名義変更が必要です。
しかし、このケースでは、中間の相続人が父一人のため、中間の相続登記を省略することが認められています。
2.中間の相続人は複数いるが、中間者が単独で相続する場合
例えば、祖父が亡くなり、手続きをしない間に3兄弟の一人だった父も亡くなったが、祖父の相続人間で遺産分割協議をした結果、父親が単独で相続することになった場合。
本来であれば、祖父から父への名義変更を済ませ、父から子へ名義変更が必要です。
しかし、このケースでは、結果的に中間で相続するのは父一人のため、中間の相続登記を省略することが認められています。
上記のような2つのケースでは、例外的に1回の相続登記で祖父名義から孫へ相続登記が可能となります。
理由として、①相続登記の登記原因中に中間の相続の過程が表示されている②省略したとしても中間の相続人の利益を害するおそれがないことが挙げられます。
中間の相続登記を省略するメリットとして、
1.手間がかからない
中間省略登記が認められたら当初の名義人から最後の名義人へ1回で名義移転の登記ができるので、手間を省ける。
2.登録免許税を節約できる
不動産の名義変更登記には登録免許税や司法書士に依頼をすれば、報酬が発生します。
が、複数回の相続登記よりも1回で済むほうが節約できます。
今回は、中間の相続人がご相談者様とお姉様にならざる得ない結果、中間の相続登記を省略できないケースでしたが、数次相続が発生している場合には、まずは中間の相続登記を省略できないか十分に検討した後、ご相談者様へ最適な手続きをご提案しております。
また、まとめサイト等への無断引用を厳禁いたします。
この記事を担当した司法書士
司法書士法人クオーレ
代表
鈴田 祐三
- 保有資格
司法書士・行政書士・宅地建物取引士
- 専門分野
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相続・遺言・生前対策・不動産売買
- 経歴
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立命館大卒。平成13年司法書士試験合格。平成19年に鈴田司法書 士事務所を開設。平成27年に司法書士法人クオーレを立ち上げ、 代表を務める。事務所開設以来、多数の相続の相談を受けており累 計相談件数1,400件以上の実績から相談者からの信頼も厚い。